朝日ぐんまって 朝日フォトコンテストコラム

総局長日記 バックナンバー

考古学の父2人[11月23日号]

 古墳時代の群馬は、東国文化の中心地と言われます。県内で出土した埴輪の人気を競った今秋の「はにわんグランプリ」で、豊かな埴輪に驚いた人も多いはず。東日本最大の前方後円墳があり、石棺や石室の質が高くて副葬品も豪華。ヤマト王権と深い関わりがあったとみられます。

 こうした説明ができるのは、研究の積み重ねがあるからです。県内では群馬大学名誉教授・尾崎喜左雄氏(1904~78年)の成果が知られます。戦後各地の遺跡を調査。300以上の古墳を発掘して後進を育成し、「群馬考古学の父」と称されます。

 その尾崎氏が生まれる30年前から、英国人が古墳を研究していたことを、明治大学博物館(東京)で12月2日まで開催中の特別展で学びました。ウィリアム・ガウランド(1842~1922年)。「日本考古学の父」と呼ばれます。

 明治政府に雇われ来日した造幣局の技師ですが、余暇を使って近畿中心に全国400の古墳を調査。精密な測量図や写真、出土品が残ります。論文集「日本古墳文化論」を読むと、前橋・大室古墳群や伊勢崎・お富士山古墳でも調査したことが分かります。横穴式石室や石棺、副葬品も比較検討し、群馬を含む上野・下野・武蔵一帯などとヤマト王権の関係を考察します。

 彼が持ち帰り、大英博物館に収蔵された史料の一部が、今回里帰り展示されています。そのうち1点が群馬で出土したという須恵器。猪や鹿を型取った装飾付きの器を前に、時代を超え考古学に情熱を注いだ2人の「父」を思いました。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)

かるたの可能性[11月16日号]

 東京・神保町のかるた専門店で昨年、珍しい商品を見つけました。「感染症カルタ」。エボラ出血熱やインフルエンザなど、うつる病気のメカニズムや歴史文化に与えた影響を学べます。こんな勉強法もあるのだと感心しました。

 こうした新作まで広く紹介する企画展「上毛かるたの世界」が12月9日まで県立歴史博物館で開催中です。絵札の原画などゆかりの史料が並ぶ会場では、親子が一緒に札を読んだり思い出を話したり。「郷土かるた県」のゆえんを見るようでした。

 上毛かるたが世代を超え愛される理由に挙げられるのは、競技県大会の継続です。臨席した折、予選を勝ち抜いた小中学生の迫力あるプレーと審判の毅然たる動作に圧倒されました。来年2月で72回を数え、全国一。2番目は、第58回大会が今年あった前橋市富士見地区の「富士見かるた」と学びました。

 日本郷土かるた協会の原口美貴子・副理事長の図録への寄稿によると、世界各地にカード(札)はあれど、かるたのように札と札を合わせて知識や教養を学べるのは、日本のほかにないそうです。郷土かるたは全国に千数百、なかでも群馬は120以上と最多。故郷や地域を大切に思う気持ちを感じます。

 かるたづくりは近年、多分野に広がっています。精神障害ある人たちの言葉から選んだ「幻聴妄想かるた」(医学書院刊)。静岡・沼津のデイサービスで、高齢者の語りを記した「すまいるかるた」。つくる過程がケアになり、札の普及が共感を広げます。日本伝統の遊戯用具は、まだまだ可能性を秘めています。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)

何をなすかでなく[11月9日号]

 関西で勤めた20代半ばから5年ほど、お茶を習いました。京都で行きつけだったバーのマスターが先生で、生徒の多くは店で顔なじみ。流派とは一線を画す。茶道は堅苦しいと敬遠していた私も、抵抗なく参加できました。

 週1回の稽古のはずが月1回になることも多く、身に付いたとは言えません。ただ、教室は好きでした。沢水を引いた山中の庵。空調はなく、季節のうつろいを感じました。四季や暦にあわせて替わるお点前や道具。畳に擦れる衣、沸く釜の湯、ふくさをさばく音。静寂を楽しみました。

 茶道では部屋の入り方からお点前まで、細かく決まりがあります。覚えたつもりでも、仕事が不調だったり、悩みがあったりする日は、つまずく。「お点前はいつも同じだから、向き合う自分の心が表れる」。先生の言葉に合点しました。

 そんな感覚を、森下典子さんの著作「日日是好日」(新潮文庫)を読み、思い出しました。いても立ってもいられず翌日、同書が原作の映画を見に高崎へ。「まず形から」「頭で考えないで、自分の手を信じなさい」。9月に亡くなった樹木希林さん演じるお茶の先生の言葉が、私の先生と重なります。

 人生も一席も、一期一会。何をなすかでなく、いまを精いっぱい感じて生きることで十分――。原作や映画から伝わるメッセージです。「靴下でもシャツでも、最後は掃除道具として最後まで使い切る。人間も、十分生きて自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないかしら」。生前語った樹木さんの言葉とも通じ合いました。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)

●過去のバックナンバー

  平成30年10月 平成30年9月 平成30年8月
平成30年7月 平成30年6月 平成30年5月 平成30年4月
平成30年3月 平成30年2月 平成30年1月 平成29年12月
平成29年11月 平成29年10月 平成29年9月 平成29年8月
平成29年7月 平成29年6月 平成29年5月 平成29年4月
平成29年3月 平成29年2月 平成29年1月 平成28年12月
平成28年11月 平成28年10月 平成28年9月 平成28年8月
平成28年7月 平成28年6月 平成28年5月 平成28年4月
平成28年3月 平成28年2月 平成28年1月 平成27年12月
平成27年11月 平成27年10月 平成27年9月 平成27年8月
平成27年7月 平成27年6月 平成27年5月 平成27年4月
平成27年3月 平成27年2月 平成27年1月 平成26年12月
平成26年11月 平成26年10月 平成26年9月 平成26年8月
平成26年7月 平成26年6月 平成26年5月 平成26年4月
平成26年3月 平成26年2月 平成26年1月 平成25年12月
平成25年11月 平成25年10月 平成25年9月 平成25年8月
平成25年7月 平成25年6月 平成25年5月 平成25年4月
平成25年3月 平成25年2月 平成25年1月 平成24年12月
平成24年11月 平成24年10月 平成24年9月 平成24年8月
平成24年7月 平成24年6月 平成24年5月 平成24年4月
朝日ぐんま 群馬県前橋市南町4-37-8 シャトレ南1F
Tel.027-221-1435(代) Fax.027-221-1768 
office@asahigunma.com
asahigunma.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本著作権法並びに国際条約により保護されています。