朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
総局長日記バックナンバー
モンゴルの星空[6月16日号]

 宮崎市の緩和ケア医、黒岩ゆかりさん(享年56)を「偲ぶ会」に今月、参加しました。夫の雄二さん(53)は言いました。「湿っぽい会にしたくないので。変な言い方かもしれませんが、楽しんで下さい」。
 その言葉通り、チェロ演奏や宮沢賢治の詩の朗読、雄二さんの歌とギターにあわせて仲間が踊るフラダンスなど盛りだくさん。幼い頃の写真に和み、若手時代のおちゃめな逸話に笑い、患者が亡くなる度に泣いたという話に感涙しました。
 6年前に取材で出会いました。緩和ケアやホスピスというと、治療の手立てのないがん患者が入院する病棟と思われがちですが、本来は違います。患者家族の痛みや不安に向き合い、身体と心を支えて生きる希望を与え、最後まで生ききることを支援する地域全体の取り組みです。
 黒岩さんは20年前に記しています。「ホスピスとは単に建物を指すのでなく、患者と家族を支援する技術であり、理念・哲学」。2001年に宮崎市郡医師会病院の緩和ケア病棟に着任すると、開業医や訪問看護師を巻き込み、痛み緩和の薬の使い方など技術面、そして精神面で支えました。病院は外来や往診をせず、開業医らが看取りまで担う体制をつくりました。宮崎モデルと呼ばれます。
 15年3月、進行がんが分かりました。星空がみたいと夫婦でモンゴルへ旅行したのは亡くなる4カ月前。暮らしを大切に丁寧に過ごされ、後任の医師や看護師に身をもって仕事を継がれた。その姿勢に感銘を受けつつも、大事な人たちの相次ぐ訃報に傷心なこの春です。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)

 

元ちゃんハウス[6月9日号]

 小欄で昨秋、がん患者支援の場「マギーズ東京」を紹介しました。専門スタッフがまるで友達のように話を聴く。患者も家族も友人も、がんに影響される人は誰でも、予約なしに訪れられる場です。英国本部が公認するのは、日本でここだけ。けれど、患者や家族の不安や孤独感を支える「マギーズのような場」をつくる動きは各地にあります。
 金沢市の「元(げん)ちゃんハウス」もその一つ。運営NPOの理事長、西村元一さんの愛称から名が付きました。街中のビルの一室を改装した空間は、マギーズ基準とは違うけれど、木の持つ温かみにあふれて居心地が良い。昨年12月に開きました。
 大腸がん専門の外科医で病院幹部だった西村さんに、私が初めて会ったのは2009年。市民向け講演会で受付ボランティアの集合時間に現れ、手伝っていました。肩書を聞いたのは後ほど。驚きました。
 「病院では医師も看護師も忙しそう。落ち着いて話も質問もできない」という患者の声を受け止め、この頃から院外での支援を考えていたようです。翌年来日した英国マギーズの代表を金沢に招いて講演会を開催。「一日マギー」などの試みを仲間ともに広げました。
 その取り組みを報告講演した直後の一昨年3月、進行胃がんが分かりました。「がん患者の医師」として発言し、本やコラムを書き、患者らからの相談を受けました。家族ががんを患う私もその一人です。
 5月31日に亡くなる4日前、がん検診の大切さをテーマに対談する様子を、友人らが写真などで伝えてくれました。享年58歳。笑顔あふれる収録ビデオが公になる日を心待ちにしています。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)


過去のバックナンバー

    平成29年5月 平成29年4月
平成29年3月 平成29年2月 平成29年1月 平成28年12月
平成28年11月 平成28年10月 平成28年9月 平成28年8月
平成28年7月 平成28年6月 平成28年5月 平成28年4月
平成28年3月 平成28年2月 平成28年1月 平成27年12月
平成27年11月 平成27年10月 平成27年9月 平成27年8月
平成27年7月 平成27年6月 平成27年5月 平成27年4月
平成27年3月 平成27年2月 平成27年1月 平成26年12月
平成26年11月 平成26年10月 平成26年9月 平成26年8月
平成26年7月 平成26年6月 平成26年5月 平成26年4月
平成26年3月 平成26年2月 平成26年1月 平成25年12月
平成25年11月 平成25年10月 平成25年9月 平成25年8月
平成25年7月 平成25年6月 平成25年5月 平成25年4月
平成25年3月 平成25年2月 平成25年1月 平成24年12月
平成24年11月 平成24年10月 平成24年9月 平成24年8月
平成24年7月 平成24年6月 平成24年5月 平成24年4月