群馬で感動した風景の一つが、樫の木の生け垣「かしぐね」です。空っ風から家屋を守るため、周囲に植えた防風林。旧街道を走った折、よく手入れされた高垣が各所にある集落を通りがかり、車を止めて見入りました。維持管理には、定期的な点検や剪定の手間が必要なはず。「地域の風格」を感じました。
渋川で震度5弱を観測した地震があった翌朝、大阪北部を最大震度6弱の地震が襲いました。19日夕現在、5人が死亡。うち3人はタンスや本棚などに挟まれ、残り2人は倒れたブロック塀の下敷きになりました。
9歳女児の命を奪ったのは、小学校の塀。通学路を示すグリーンベルトそばの塀が違法建築で、耐震調査も対象外とは、無念極まりありません。全国の小中学校などの塀を緊急点検するそうですが、すべての通学路、公道沿いを点検すべきでしょう。
「ブロック塀のそばを歩くのが怖い」と同僚が書いたのは阪神大震災後の1995年秋。78年の宮城県沖地震を教訓にブロック塀も基準強化されたのに、違法建築が続くという指摘でした。けれど一昨年の熊本地震でも、益城町で男性が塀の下敷きになり死亡。地震後の調査では、同町で住宅などのブロック塀の9割が基準を満たさず、うち75%が倒壊していました。
ブロック塀から生け垣への転換を奨励する助成制度は、群馬でも多くの自治体にあります。なにより生け垣と同様に、塀なども安全管理と維持に手をかけることが、人の命も街も守るのだということを、今回の地震は私たちに問いかけています。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)