先月、太田駅北口前に新たな文化交流スポットが誕生した。美術館と図書館からなる全国的にも珍しい3階建て複合施設で、見た目も中身もかなりユニーク。多面体と緑で構成された外観は、ビルや商店が軒を連ねる街中にあって一際目を引く。室内は美術館と図書館エリアが二重螺旋のように絡まりあいながら上へ向かう構造になっており、市内にあるさざえ堂を彷彿とさせる。
現在、美術館では施設の設計を手掛けた建築家平田晃久さんの展覧会が開催中だ。平田さんの作品模型や建築アイデア案と共に、市民を巻き込みながら設計が進行していった経緯などが紹介されており、完成に至るプロセスそのものもユニークだと分かる。
展示を観ていて、アーツ前橋のことが頭に浮かんだ。同施設も、設計段階から運営に至るまで市民が深く関わっているからだ。そして今、アーツでは市民発案による「前橋の美術」展が開かれている。初の試みはアーツにとどまらず、市内の阿久津画廊、ヤマトギャラリー、ギャラリーオーツーで関連企画が行われるなど広がりを見せている。
「からまりしろ」という考えを提唱する平田さん。周囲と「からまる」ことのできる「のりしろ」を作ることで、新しい価値観が混在できる建築になるという。コミュニケーションが生まれやすく居心地も良い。そんな「からまりしろ」を持つ市美術館図書館の可能性に大いに期待したい。
(中島美江子)