東京・神保町のかるた専門店で昨年、珍しい商品を見つけました。「感染症カルタ」。エボラ出血熱やインフルエンザなど、うつる病気のメカニズムや歴史文化に与えた影響を学べます。こんな勉強法もあるのだと感心しました。
こうした新作まで広く紹介する企画展「上毛かるたの世界」が12月9日まで県立歴史博物館で開催中です。絵札の原画などゆかりの史料が並ぶ会場では、親子が一緒に札を読んだり思い出を話したり。「郷土かるた県」のゆえんを見るようでした。
上毛かるたが世代を超え愛される理由に挙げられるのは、競技県大会の継続です。臨席した折、予選を勝ち抜いた小中学生の迫力あるプレーと審判の毅然たる動作に圧倒されました。来年2月で72回を数え、全国一。2番目は、第58回大会が今年あった前橋市富士見地区の「富士見かるた」と学びました。
日本郷土かるた協会の原口美貴子・副理事長の図録への寄稿によると、世界各地にカード(札)はあれど、かるたのように札と札を合わせて知識や教養を学べるのは、日本のほかにないそうです。郷土かるたは全国に千数百、なかでも群馬は120以上と最多。故郷や地域を大切に思う気持ちを感じます。
かるたづくりは近年、多分野に広がっています。精神障害ある人たちの言葉から選んだ「幻聴妄想かるた」(医学書院刊)。静岡・沼津のデイサービスで、高齢者の語りを記した「すまいるかるた」。つくる過程がケアになり、札の普及が共感を広げます。日本伝統の遊戯用具は、まだまだ可能性を秘めています。
(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)