群馬に赴任して2年弱。消費行動に大きな変化がありました。東京の自宅は駅から徒歩十数分で、重い商品を持ち帰るのも一苦労です。ネット通販を使い始めると、次第に対象が増えました。けれど当地ではマイカー。重くてもかさばっても大丈夫です。
それだけではありません。店頭で買えば、目の前にいる人、お店や企業、地域経済に多少なりとも役立ちます。人がまばらな商店街を目にすると、わずかでも応援したいと考えてしまいます。通勤に便利で住んでいた東京の自宅では、抱かなかった「地元」感情です。
佐波郡東村(現伊勢崎市)出身の須永珠代さんは、ふるさと納税ブームの立役者と称されます。ネットサイトを介して地域を外部の人と結び、お金と情報を循環させる。志も広げる取り組みです。
きっかけは、父親の言葉だったと、一昨年12月の本紙ひと欄で紹介されています。家電を安くネットで買おうとし、地元に金が落ちないと叱られたといいます。起業から6年。いまや被災地支援やNPOと連携した課題解決プロジェクトなど、新たなメニューを次々開発しています。
草津白根山の噴火を受けて先月、須永さんの会社のサイトの災害支援ページに、草津町も並びました。福井や石川に住む友人たちのSNS投稿が、雪一色になる頃には「北陸豪雪」支援欄も。被災自治体の事務作業を助けるため、他の自治体が代理受付する仕組みは、2年前の熊本地震の時に出来たそうです。返礼品競争を超えた、ふるさと納税の可能性を感じます。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)