教師と生徒が対話できる双方向型
県内でいち早くスタート 太田&桐生
新型コロナ感染症対策で大半の学校が臨時休校となる中、インターネットを介したオンライン授業を提供する動きが広がっている。群馬県は13日、小学生向けの体育の動画配信を開始した。それに先駆け太田のぐんま国際アカデミー(以下GKA、金子弘幸中高等部校長)と桐生大学附属中学校(以下桐大附、味戸克之校長)は、ビデオ会議アプリを使用したオリジナル授業を生配信している。教員と生徒が互いの顔を見ながら対話もできる双方向型の授業を県内でいち早く導入した私立両校の取り組みを紹介する。(上原道子、池田武)
【互いの顔見える会議アプリ】
オンライン授業は、パソコンとウェブカメラやマイクがあれば実施できる。カメラ内蔵のノートパソコンならマイク付きのヘッドフォンを用意するだけだ。2校とも、米国で開発されたビデオ会議アプリ「Zoom」を使用し配信。教員が生徒の様子を映像で把握したり、全員の発言を聞くことが可能だ。画面には互いの顔のほか、黒板や教材も表示でき授業スタイルに応じて切り替えられる。桐大附はこれまでも教職員研修などで同アプリを利用しており、使い慣れたツールという。両校ともホームルームから始まり、担当教員が授業を展開。5月6日まで休校予定のため、配信も休校期間終了まで継続するという。
GKAは休校の話が持ち上がった2月頃から検討を始め、3月から一部クラスで数教科の配信をスタート。春休みを挟んで、4月9日の新学期の授業初日からは朝のホームルームから時間割通りにオンライン授業を行っている。教諭はテレワークを推奨されているため原則、自宅から配信している。
【ストレス対策など調整必要】
桐大附は今年1月、中国や韓国で授業をオンライン化しているという報道を受け、全生徒に通信環境や機材に関するアンケートを実施。必要な家庭にはパソコンを貸与するなど環境を整えていた。感染収束の動きが見えないことから3月末、教員にオンライン化の準備を呼びかけ、4月6日に本格導入を決定。翌日、生徒たちに説明したところ現代っ子らしくパソコンの設定などお手のもの。新入生も含め、オンライン化へのハードルは低かったという。45分授業を午前に3コマ、午後に2コマ、昼食前には体を動かす時間もとり、これら全てをオンラインで実施中だ。
平日のある日。始業時間が近づくと、生徒らが担当教員の授業に一斉にアクセスする。教室の教員用パソコンには、自宅でパソコンに向かう生徒の顔が映し出される。ニコニコした子、照れくさそうな子、緊張している子など、表情は様々だ。「全員がそろうまで、もう少し待ってね」と教員が呼びかけると「はーい」という元気な返答。別のクラスでは、教員が「みんなの顔、ばっちり映ってるよ。先生も少し緊張しています」と呼びかけると、画面に生徒たちの笑顔があふれた。
とはいえ、オンライン授業にも限界はある。桐大附でシステム導入に関わった福田享教頭は、「長時間画面に向かうため、ストレス対策など今後も調整が必要。また、授業の体制は整っても学校に来なければ部活動ができない。早く通常の生活に戻ってほしい」と話した。
【生徒・保護者、おおむね好評】
GKAでは、既に生徒や保護者から「通学時間が有効に使える」「オンラインの方が質問しやすい」「自分のペースで勉強できる」「録画されるので見返すことができ助かっている」など、概ね好意的な意見が寄せられている。同校の桐生朋文教務主任(36)はメリットについて「オンラインでの授業は教師側も入念な準備が必要。更に深い教材研究を重ねることになり、授業力の向上にもつながると思う」と話す。また、様々な課題も見えてきた。「オンライン時間が多いと疲れてしまうといった意見も多いので、ログインせず課題に取り組む時間をバランスよく設け、生徒自身が時間をマネジメントできるよう工夫していきたい」と意気込む。