美術博物館でウインドー越しに館内の作品公開
企画展や展示室紹介動画、ぬり絵サービス
「今、できることを!」 県内の美術館や博物館の多くは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今月下旬まで休館を余儀なくされている。そこで各館とも、休館中にも館の活動や作品の魅力を発信しようと、さまざまな工夫を凝らしている。(中島美江子、上原道子)
ガラス越しにアート感じて
アーツ前橋
臨時休館中のアーツ前橋では、1階交流スペースに置かれたアート作品をガラス越しに公開中だ。3月31日まで実施予定で、期間中は午後11時頃までライトアップされるため夜間でもアート鑑賞が楽しめる。
同館では、3月15日まで開催されていた前橋ゆかりのアーティストによる企画展「前橋の美術2020-トナリのビジュツ」(同展実行委主催)を同5日から休止。展示に加え、関連イベントも中止・延期になったことを受け、同館の住友文彦館長(48)や同企画展の今井充俊実行委員長(62)、同展参加作家の八木隆行さん(48)らは休館後、「何か出来ることはないか」と模索していた。
同館の支援事業で前橋に滞在しているアーティスト三枝愛さん(28)や、同館の活動をサポートする市民グループ「未来の芽里親プロジェクト」(寺澤徹代表)メンバーの福西敏宏さん(55)も協議に加わり、「前橋の美術」の出品作品の一部などを1階に設置することに決めた。16~18日の3日間にわたり、交流スペースで「前橋の美術」の参加作家らが搬出する予定だった出品作品の設置作業を行った。
アーツ前橋、「前橋の美術」参加作家、滞在作家、市民グループの四者による協働事業からは、「こんな時こそ共に知恵を絞り、美術館やアートの役割を発信しよう」という力強いメッセージが伝わってくる。住友館長は、「アートは特別なものではなく、日常の中にあるもの。現在、美術館は閉まっていますが、作品もあるしアーティストも変わらず制作をしています。どんな時も、『トナリに美術がある』ということを忘れないで欲しいですね」と話す。同館(027・230・1144)。
休校中の子どもにも興味喚起
県立歴史博物館
27日からテーマ展示「新田猫絵展」が始まる高崎の県立歴史博物館では、HP上で猫絵のぬりえの公開を始めた。パソコンからダウンロードして印刷したぬり絵が楽しめる。休校のため屋内で過ごしている子どもたちにも事前に親しみをもってもらい、実際の猫絵展に足を運んでほしいと企画した。
ぬり絵は実際の猫絵をモノクロに加工。自由に着色して同展会期中(5月10日まで)に受付へ持参するとぐんまちゃん缶バッジがもらえる。
なお、同展では江戸時代に新田岩松氏の歴代当主が4代にわたり描いた猫絵などを通して、猫が当時、蚕や繭を食い荒らすネズミを退治してくれる守り神とされたことを紹介する。同館(027・346・5522)。
ネット駆使し館の魅力UPへ
県立土屋文明記念文学館
高崎の県立土屋文明記念文学館では15日から、写真共有サイト(インスタグラム)で、館内で撮影した動画を公開している。
常設展示室中央にある円形コーナー「三十六歌人」の紹介動画では同館学芸係の佐藤直樹さん(45)が、万葉歌人・山部赤人の春の歌をを解説する。万葉時代から現代に至るまでの36人の有名な歌人による和歌を一首ずつ掲げ、各歌の世界観を表現したジオラマをケースに収めて柱の中に埋め込んでいる。開館当初からあるシンボル的スポットとなっている。
また、翌日16日には、童謡「うさぎとかめ」で知られる群馬出身の石原和三郎作詞「上野唱歌」の紹介動画を制作し、即日公開した。佐藤さんは「これを機に館の魅力が伝わる動画をどんどん発信していきますので、ご期待ください」と呼びかける。同館(027・373・7721)。
館内や次企画展、WebでPR
県立自然史博物館
翼竜や古生代の昆虫などを紹介する企画展「空にいどんだ勇者たち」の開始が20日から27日に延期となった富岡の県立自然史博物館は、担当学芸員が展示会場を準備しながら紹介する動画をフェイスブック上で公開。
また以前から公開していた「バーチャルミュージアム」(博物館の各常設展示室をWeb上で体験できる動画システム)を、トップページの目立つ位置でPRしている。同館(0274・60・1200)。
※なお、上記3館の県立施設は26日まで休館中。
温泉旅館で学童サービス、子ども体験プログラムなど独自企画続々
県内の旅館やホテルでは、予約のキャンセルが相次いでいる。そんな中、知恵を絞り様々なアイデアや独自企画を打ち出す温泉旅館がある。それぞれの思いを取材した。
大広間や会議室を子どもたちに開放
伊香保温泉 ホテル松本楼
渋川の伊香保温泉ホテル松本楼は、13日から有料学童サービスを始めた。小学生を対象に、大広間や会議室などを開放。保育士資格のあるスタッフが対応している。
政府が一斉休校を要請した先月末から、同館の松本光男社長(48)と若女将の由起さん(50)夫妻は、渋川市など関係機関と相談しながら「子どもたちの居場所作り」を進めてきた。松本社長は、「私たちにも小学生の娘がいますし子育て中のスタッフも多い。コロナのウイルスの影響で大広間も空いていて、食事の提供も可能。ならば、我々で出来ることをしようと思いました」と語った。
子どもたちは、スタッフの荒木紗知恵さん(37)と共に勉強をしたり、本を読んだり、ボードゲームや卓球を楽しみながら1日を過ごす。「休校で友だちとの会話が無くなってしまったので、ここでは笑顔で楽しく過ごしてもらえるよう子どもたちと接しています」と荒木さん。
仕事の都合で旅館の学童に2日間、子ども2人を預けた渋川の斉藤美和さん(49)は、「専門のスタッフさんもいるし昼食も出るので安心。学童がない地域なので助かりました」と微笑む。若女将の由紀さんは、「預け先がなくて困っている親御さんたちの力になれれば」と語った。
学童は27日までの平日午前8~午後6時。昼食付きで1000円。1日先着20人。前日までに要予約。渋川市内で感染者が出た場合は受け入れ中止。同旅館(0279・72・3306)。
旅館のお仕事、一緒に体験してみませんか?
四万温泉 柏屋旅館
子どもたちに旅館の仕事を体験してもらおうと、四万温泉の柏屋旅館は2日から「子ども旅館プログラム」を始めた。
新型コロナウイルスによる臨時休校を受け、初めて企画。お客さまのお出迎えやお見送り、客室や温泉の掃除、食事の提供など、宿泊しながら旅館の仕事の楽しさを体験してもらうプログラムで、参加者は30分程度のオリエンテーリングを受けた後、スタッフと共に旅館の仕事を行う。体験後、フォトアルバムや終了証が手渡されるという。同旅館代表取締役の柏原益夫さん(58)は、「旅館の仕事の楽しさ、やりがいを感じてもらえたらうれしい。スタッフが全力でサポートしますので、休校や春休みに是非、体験して下さい」と呼びかける。
4月10日までの平日。小中学生対象(保護者の同意があれば子どもだけの参加可)。料金1泊2食(体験・特典付き)12000円~。2日前までに要予約。同館(0279・64・2255)