日本人にとって大切な「なつかしさ」という情緒が失われつつある気がしてならない。都市への人口集中が進み、故郷を持たない人が増えているからだろうか。地方もしかり。大都市を遠目に見ながら、「古いものより新しいもの」という価値観を持つのだろう。であればこそ、その拠り所を守っていかなければならないと思う。
数年前、四万温泉にある小さな木造校舎が解体されそうになった。中之条町は戦前に建てられた歴史ある校舎よりも駐車場に価値を見いだしたのだ。反対する人は少ない。そんな中でも数人の仲間が校舎存続に協力してくれた。結果、解体は免れ、存続を訴えた我々は当面の間、町から校舎を無条件で貸与されることになった。解体回避を町と交渉する間、「村を再生する」という意味を込めたNPO「Re Village」を昨年に設立。人間万事塞翁が馬。校舎解体危機を契機に、新たな結束が生まれた。
我々が考えたのは地域再生には「何が必要か」、つまり「普遍的価値とは何か」。その答えの一つが、グリーンミシュランガイドにも認められる観光地とはどういうものかという事だった。
早速、同ガイドに詳しい「群馬日仏協会」の梅津宏規専務理事を招聘し講演していただいた。結果、新たな視点の活動をスタートする事ができた。温泉以外の魅力が注目されないのは、新たな観光資源を創造できていないからと分析。そこで、我々は四万温泉限定のオリジナルロゼワインを売り出そうと、梅津専務理事と共に準備を進めてきた。
今月18日、ようやくお披露目パーティーを行うことができた。サーモンピンク色のロゼワインは繊細でフルーティーな味わい。今後、各旅館で提供してもらう予定だ。校舎存続やオリジナルワインという新たな観光資源の創造など、「サスティナブル(持続可能)」な活動を通して地域の再生を促し、人々の拠り所を守っていきたいと思う。