ラスベガス銃乱射事件(Vol.6)

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前橋出身の美術作家SUSH MACHIDA(すしゅ・まちだ)さんがラスベガスでの暮らしを紹介。
花やぬいぐるみ、お菓子などが手向けられているラスベガス銃乱射事件の現場

日本でも連日報道されていたという、犠牲者が58人にも上ったラスベガスでのライフル乱射事件に続き、日本時間の6日未明にもテキサスで事件が発生、少なくとも26人が死亡しました。

ラスベガスの事件が起きた時、私は事件現場から程近いカジノバーで食事をとっていました。外はパトカーのサイレン音が鳴り響き、赤い回転灯が店内を染め、事件現場から逃げて来たという若者はカウンターに暗い顔を伏せて、何も語ろうとはしませんでした。

「アメリカは銃社会」という印象が強いでしょうが、マシンガンを所有するのは極一部の銃マニアだけで一般的ではありません。それを所持し誇示する行為は野蛮と考えるのが普通です。しかし、国土に比例し価値観の振り幅も広いのが米国。それを「かっこいい」「男らしい」と認める人々も確かにいます。

銃の保有を認める憲法は、マシンガンなど無い時代に作られました。それなのに法律は改正されないまま。銃支持層の票や献金を狙う政治家の存在が理由とも語られますが、それ自体「今更」感が強いのも事実。武器の保有を廃止したところで、それを隠し持つ者が強者になるでしょう。つまり、「目には目を、歯には歯を」「銃には銃を」といった論者が多いのです。

この辺は、感情論で語られるものではありません。「武器よさらば」とは実にハッピーな理想論ですが、持つと持たぬとの判断は国民に委ねられます。米国はもう戻れないところまで来てしまっているのでしょう。

今回の銃乱射事件だけでなく、人口200万人程のラスベガスだけで年間およそ300件もの殺人事件が起きています。その多くが拳銃によるもの。 喧嘩で「カッとなって」撃ってしまったという事件が実に多いのです。

そこに銃があるから、トリガーを引く。そこにマシンガンがあるから乱射事件を起こす。

今回ラスベガスでの事件は犯人の自殺により幕を閉じ、動機は解明されないまま。もしかしたらそこに理由などは無く、もっと単純でひねくれた大量殺戮という願望だけがあったのかもしれません。

英雄に憧れる者もいれば、悪役に憧れる者もいるという事でしょうか。

宗教や人種、貧困や教養といった要素だけが乱射事件の原因では無いという事を、今回の事件は証明しました。こうした犯人を生み出してしまう社会そのものが問題であり、それを改善する国民一人一人の努力が必要です。私自身もまず自分で出来る事からと思い、地元の高校にてボランティアの講義を始めました。子供達に夢や希望を与える。そして自分もまた、希望があるからこそ横道に逸れる事なく絵を描き続けていられるのです。

明日になればまた日は昇り、この街も徐々に日常を取り戻すでしょう。しかし、犠牲者が戻る事は無く、また、犠牲者の家族、現場にいた人々に差す日の光は、一生暗い影を落とすのだと考えると心が痛みます。ご冥福を祈るとともに、心から平和を願うのみです。

 

SUSH MACHIDA (すしゅ・まちだ)

SUSH MACHIDA (すしゅ・まちだ)

【プロフィール】
前橋生まれ。県内の高校を卒業後、92年渡米。アメリカンフォトインスティテュート(ニューヨーク大)選出。ネバダ州立大学ラスベガス校修士課程修了。Otis美術大客員教授を経て、現在、美術作家として活動中。ラスベガス在住。インスタグラム@sushmachida

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