レンズも泣いた [東日本大震災から10年となった11日付朝刊の…]

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東日本大震災から10年となった11日付朝刊の「別刷り特集」をご覧になりましたか。大切な人や住み慣れた町を一瞬で奪われ、苦悩を抱えながら支え合ってきたみなさんの歩みを写真で紹介しています。

撮影を重ねてきたのは朝日新聞映像報道部の写真記者たち。震災当初、余震の中でがれきに埋め尽くされた凍てつく町をひたすら歩き、悲しみに満ちた避難所でレンズを曇らせ、ご遺体の仮安置所でも手を合わせてシャッターを押し続けました。

こちらはカメラの腕などからっきし。なのに前橋総局に赴任する昨秋までの3年間、映像報道部デスクとして写真記者たちと紙面づくりに明け暮れました。事件事故に災害現場、国会論戦、謝罪会見、五輪、甲子園、サッカーW杯、フィギュア世界大会、本社ヘリや本社機からの空撮、動画撮影……。臨機応変に職人技を駆使しつつ、殻を打ち破って新たな地平をめざす進取の精神に富んだ仲間ばかりです。

職人気質で弱音も自慢話も控えめ。朝刊編集後の深夜、宿直室に向かう当番を呼び止めては「震災当時、どんな取材をしたの?」と尋ねると、ビール片手に打ち明けてくれました。「数万枚撮って笑顔が1枚もなかった」「紙面にはとても載せられない壮絶な写真ばかりで震えた」「目を背けられない僕らと一緒にレンズも泣いた」

仲間たちがたびたび沿岸部を再訪し、撮影させていただいたみなさんの歩みに静かに寄り添ってきたことを知っています。「別刷り」はその中間報告。ぜひ手にとってみてください。

(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

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