先週末、富岡製糸場内の西置繭所を取材した。駅近くの無料駐車場に着くと、ちょうど「まちなか周遊観光バス」が出発するところ。小雨も降っていたので、慌てて飛び乗った。車内ではボランティアがお薦めのスポットを流暢に解説してくれ、約1㌔の小さな旅はあっという間に過ぎた。
西置繭所を初めて訪れたのは3年前。ヘルメットをかぶって仮設施設に上り、大工さんの作業風景をガラス越しに見学できたのは貴重だった。そして今回、かつての巨大な繭貯蔵施設は展示室とホールに生まれ変わった。歴史的建造物の中にいながら様々な可能性が感じられる近代的な空間にワクワクした。
見学後、最終バスを逃したので、街並みをブラブラ散策。おしゃれなカフェを発見し一服しようかと店内を覗くと店主が「ごめんなさい」という顔で頭を下げている。もう閉店時間だ。諦めて歩き出すと後ろから「よかったら一つどうぞ」。さっきの店主が、甘酸っぱい香りのマフィンを手渡してくれた。まだほんのり温かい。
県内で唯一、世界遺産という偉大な宝を持つ富岡のまちが、コロナと梅雨空で疲れた気持ちを晴らしてくれた。また来よう。
(上原道子)