人と書店を結ぶしるし  御書印 

県内6店舗が参加中

書店をめぐりオリジナルスタンプを帳面に集める「御書印」が話題となっている。寺社で参拝の証として授与してもらう「御朱印」からヒントを得て、昨春から小学館パブリッシング・サービスが中心となり全国に展開、2月8日現在で254店舗が参加している。三つのスタンプ押印に加え、本の一節や著者、本にまつわる短い言葉などを添えるのも特徴だ。現在、県内で参加している6店舗の御書印を紹介する。

【御書印の楽しみ方】
参加店で「御書印をください」と伝えると初回は無料でもらえる通常版の御書印帖=写真㊧=に押印(200円程度、各店舗による)。店舗によってはハードカバーの特装版(税込2200円)=同㊨=も販売中。全国の異なる50店舗の御書印を集めて事務局に送付すると「巡了印」がもらえ、先着150人には「御書印特製図書カード(千円分)」がプレゼントされる(2月1日現在13人が達成)。御書印プロジェクトHP=https://note.com/goshoin

2種類の御書印を持つ川村厚夫社長

そびえたつシンボル・岩櫃山の印

川村書店(東吾妻)

東吾妻町にある国天然記念物、「原町の大ケヤキ」の近くにある川村書店は1896年(明治29年)創業の歴史ある書店だ。昨年12月からこのプロジェクトに参加した。3か月間で約30人。同町在住の児童文学作家、加部鈴子さんも真っ先に立ち寄った。中には「これで群馬の御書印を制覇しました」と喜ぶ人も。岩櫃山が描かれた印は赤と緑のバージョン。言葉は専務の川村晃さん(57)が、本に関連したマイケル・ジャクソンやエドワード・ギボンなどの名言を選んで書いている。代表取締役の厚夫さん(86)は、「御書印が読書の入口になれば嬉しい。これをきっかけに文化の灯をより広めたい」と意気込んでいる。
■吾妻郡東吾妻町原町442 ℡0279-68-2007、午前9~午後7時半、日曜休み

特装版に書かれた御書印を持つスタッフ

アートなスタンプ 未来を想う言葉

フリッツ・アートセンター(前橋)

前橋の敷島公園近くにある「フリッツ・アートセンター」の御書印は、フリッツらしい魅力が随所にあふれている。絵本作家・荒井良二さんデザインのオリジナルスタンプのほか、ワードアートで名高い美術家、ジェニー・ホルツァーの作品のスタンプ。そこに代表の小見純一さん(62)が、今はこれが気に入っているという「前人木を植(うえ)れば 後人涼し」の言葉を筆ペンで添える。

御書印を「面白いプロジェクトだと思った」という小見さんは、「本屋も人々にとって詣でる場所なのかもね」と話す。未来の子どもたちの木陰にと、昨年、前庭にモミの木を植えた。今年36年目。「絵本みたいな場所」を目指す本屋は、これからも変化していく。
■前橋市敷島町240-41 ℡027-235-8989、午前11~午後6時(短縮営業中)、火曜休み

夏の祇園祭の風景をスタンプにした

押印から始まる会話、お土産にして

近江屋書店(桐生)

1899年創業、桐生の本町通りに面した近江屋書店は、昨年10月から参加。印影は、令和になって最初の夏の祇園祭で、街中を勇壮に巡行する鉾のわきに、「おうみや書店」の看板が浮かび上がるデザインだ。

色は店のシンボルカラー「緑」で、岸田啓作社長(48)が添える言葉はカフカの名言「書物は我々の内なる凍った海のための斧なのだ」。岸田社長は、「遊び半分でも、お客さんが実際に店に足を運んでくれるのはありがたい。何も買わなくても実店舗の良さを感じたり、会話の中で生まれる、地元の豆知識や情報など″お土産〟を一つでも持って帰ってもいたいですね」と話す。

■桐生市本町4・77  ℡0277・45・3270 午前9~午後7時、日曜休み

建築家・白井晟一の書を添えた印

明治初年創業 歴史と風格感じる印影

煥乎堂(前橋)

明治初期の創業以来、地域の教育と文化興隆の一助を担ってきた前橋の「煥乎堂」。
御書印には、老舗書店の風格が感じられるおなじみのマークに、旧店舗(1954年竣工)を設計した日本建築界の巨匠・白井晟一の言葉「QVOD PETIS HIC EST(もとめるものはここにあり)」がデザインされたスタンプ。そこに、同じく白井の書「汝の求むるもの 精神(こころ)の炬火 茲に在り」が添えられている。

プロジェクトには昨年12月から参加。大型店のため、あらかじめ印刷した紙に来店日を書き入れ渡している。反響に店長の蛭川幸則さん(48)は、「御書印をきっかけに初来店する人もいて、まさに″人と書店を結ぶ印〟になっている」と語る。

■前橋本店=前橋市本町1・2・13 ℡027・235・8111、午前10~午後8時(短縮営業中)

押印のあと言葉と日付を添える

書店から書店へ 人の流れ生まれる

REBEL BOOKS(高崎)

個性的な選書が人気の、高崎の小さな書店「レベルブックス」は、昨年12月から参加している。ロゴマークのスタンプを中央に押し、脇には英字で、荻原さんが今、最も好きな本の著者名と書名(レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」)を添える。神秘的なものに目を向ける感性を持つことの大切さを伝えるエッセイだという。

代表の荻原貴男さん(41)はふやふや堂と、フリッツ・アートセンターが一足先に参加していたことを聞き興味を持った。荻原代表は、「書店から書店へという人の流れが生まれる面白い企画。店を構えて4年。まだ店の存在を知らない人も多いので、押印がきっかけで訪れ、店の本棚を見てまた来たいと思ってもらえたら」と期待する。

■高崎市椿町24・3  http://rebelbooks.jp/ 
午後1~午後6時(短縮営業中)水曜休み

ペンギンのロゴ印を真ん中に押す

「肩の力を抜いて」 でも上昇したい

ふやふや堂(桐生)

ノコギリ屋根の工場など、歴史的な街並みがある桐生の「小さな本やさん・ふやふや堂」。ミシマ社など主に小出版社の本を扱い、御書印には昨年10月から参加。

御書印は、かわいいペンギンのロゴ。そこに添える一筆は、「肩の力を抜いていこう⤴」。店を経営するのは、街づくりにも携わる店主の齋藤直己さん(42)。東京での学生時代に考えたキャッチフレーズで、「こうでなければいけないと思わず気楽に行こう。最後の矢印には、それでも上昇したい、という意味を込めている」と話す。

これまで集印に訪れた人は約30人。月・金曜のみの開店にもかかわらず、県内外、遠くは四国から来た人も。「店を知ってもらうきっかけになれば」と心を込めて御書印を押している。

■桐生市本町1・4・13旧早政織物工場内、℡0277・32・3407、月・金曜の正午~午後7時

掲載内容のコピーはできません。