春は番組改編の季節でもある。母校の恩師、宗教音楽の研究者、皆川達夫先生が、NHKラジオ番組「音楽の泉」を3月末で勇退した。日曜の朝のオープニングでは、「タンタラタンタン、ターンターン」とシューベルトの曲が流れる同番組を30年以上続け、92歳まで進行していたとはビックリ。中々できない。
大学時代、皆川先生の授業は大人気。50問以上あったクラシックのイントロ当てクイズに合格した学生しか受講できず、自分もなんとか滑り込む。グレゴリオ聖歌からビートルズまで様々な年代の曲を実際に聞きながら学ぶ西洋音楽史の授業は楽しく刺激的だった。
部活のグリークラブでも、顧問としてミサ曲を指揮。演奏前には、「花の香りをかぐように」とダンディーな呼吸法から始まった。定演後、ワインの著書もある先生にワインを部員全員からプレゼントすると、満面の笑みだった。
隠れキリシタンの歌「オラショ」研究など、研究者としても一流、教師としても温かく指導してくれた先生。ラジオから解説や作曲家名、曲名など、よどみない滑舌で流れてくる声は聞けなくなったが、今度はいきいきした知的な100年人生の楽しみ方を教えてもらいたい。人生の先生でもある「皆ちゃん」、まだまだお元気で。
(谷 桂)