伊参スタジオ映画祭 メイン企画「シナリオ大賞」
中之条で、2001年から行われている「伊参スタジオ映画祭」では5月上旬、メイン企画である「シナリオ大賞」の今年の開催を決めた。シナリオ大賞とは、全国から中編・短編の映画シナリオを公募し、その大賞作品に対し賞金授与や撮影援助を行い映画化させる試みで、例年200作品以上の応募があり、現在までに32本もの映画が創られてきた。
伊参スタジオ映画祭が始まるきっかけは、1996年に群馬県人口200万人記念映画「眠る男」と山崎まさよしさん主演「月とキャベツ」が、中之条の廃校を拠点に撮影されたことによる。映画ファンが町に訪れるようになり、廃校は「伊参スタジオ」と改名し映画の衣装や写真を展示、地元ボランティアによって「伊参スタジオ映画祭」が開催されるまでに至った。ちなみに私は、第1回開催時まだ映画学校の学生で、自分が生まれ育った町で映画祭が始まった興奮を感じながら、いち観客として体育館に貼られたスクリーンを見つめていた。
新型コロナは、映画業界に、全国の映画館や映画祭に大きな影響を与えている。全国的に見ても重要な映画祭である高崎映画祭が、この春全ての上映を中止する決断をした時には、胸が締め付けられる思いがした。伊参スタジオ映画祭は今年、開催されれば記念すべき第20回目の開催である。現在、検討中だが例年の11月開催は難しい局面に立たされている。そして、シナリオ大賞の開催についてもスタッフで意見を交換した。そして出した答えは、「このような状況だからこそ、行うべき」だった。
シナリオ大賞で過去に大賞に選ばれた作品は、完成度が高いという以上に「これを映画にするんだ!」という書き手の熱量・内的な必然性を感じられるものが多い。だから私は、「現在の状況下で、どんな物語が語られるのだろうか」という事に関心がある。それはシナリオの中に今の社会状況を含めるべきという事ではない。ラブストーリーを書くにしてもコメディーを書くにしても、映画の作り手たちは今まさに「物語を語る事への内的な必然性」と向き合っているに違いない。そうして語られる物語を、読んでみたいのだ。
先が見えず、生き方や価値観の変化が求められる中にあっても「映画の力」は消えない。シナリオ大賞の公募は今日15日から始まる。熱量のあるシナリオの応募を待つと共に、これからもスタッフや関係者と力を合わせ伊参スタジオ映画祭を盛り上げていきたいと思う。