俳優・歌手 岡田 浩暉 さん

どんな役もがむしゃらに

「何が飛び出してくるか分からない。予測不能な状況を楽しみながら水原を演じていきたいですね」

 

【物語を左右するキーマン】

「オラァ〜」 パンチパーマに紫のシャツ、顎を突出しヤクザをギロリと威嚇する。16日にスタートした大島優子主演のTBSドラマ「ヤメゴク」で、岡田さんが演じるのは荒川中央署から組織犯罪対策課第4課(通称マルボウ)に異動した刑事・水原公樹。本作は「暴力団離脱者電話相談室」を舞台に、そこで働く警察官・永光麦秋(大島優子)の葛藤と成長、周囲の人間模様を描く。

見た目のインパクトはもちろん、体を張ってヤクザと対峙する水原は物語の展開を左右するキーマン的存在だ。「強烈なキャラはパターン化しやすくともすれば型にはまりがちだが、自分の中から水原と似た部分を見つけ出せればリアルで人間くさい人物像が生まれてくるはず。振り切った役は自分が思いもよらなかった動きや感情がポッと出てくる瞬間がある。何が飛び出してくるか分からない。予測不能な状況を楽しみながら水原を演じていきたいですね」

【役者への挑戦は最大の転機】

太田で繊維業を営む家に生まれる。幼い頃から歌うことが好きで、中学に入るとオリジナル曲を作るようになった。大学卒業後、地元の企業に就職するが「ミュージシャンになりたい」という夢を諦めきれず1年後に上京。91年、3人組バンド「To Be Continued」のボーカルとしてデビューを果たす。3年後、ドラマ「もしも願いが叶うなら」の挿入歌「君だけを見ていた」が50万枚を超えるヒットを記録。俳優としても出演、一躍脚光を浴びる。「プロデューサーに誘われたのがきっかけ。バンドものるか反るかのギリギリ勝負の時だったので、ドラマ出演は最大の転機になりました」

以来、音楽活動と平行して俳優業をスタート。ドラマを皮切りに映画、舞台、ミュージカルと活躍の場は大きく広がっていった。「役者は3日やったらやめられない」 そんな言葉があるように演じる楽しさや喜びに魅せられていく。「悪者をやっつけたりキレイな人と恋に落ちたり。役を通して色んな人生を生きられる。想像世界で自由に遊ぶ解放感や心地よさは何ともいえない」

一方、演技に対するスタンスはストイックそのもの。舞台に出演する前はお酒や冷たい物は一切口にしない。役に入り込むため人付き合いも極力控えるという。「本当は稽古後にみんなと飲みに行きたいけれど、それが出来ない。器用ではないんですね。極端な役柄が好きなように、僕自身も極端な性格かもしれない」

【最後の最後まで諦めない】

医者、教師、武将、これまで数多くのキャラクターを演じてきたが、駆け出しの頃と今では役作りのアプローチ法がガラリと変わったという。「以前は役に近付くため自分を変えよう変えようと必死だったが、そうではなく既に自分の中にあるものを引っ張り出し明確にしていくことが重要だと気付いた。特に瞬発力が問われるテレビは、柔軟でないと乗り切れませんから」

役者としてのキャリアは20年以上。主役脇役端役どんな役にも多くの学びがあり、「今だからこそ演じられる絶妙なタイミング」でオファーが舞い込んできた。「ヤメゴク」の水島役も、「役者としての幅を広げたい、骨太な役を演じたい」と思っていた矢先に飛び込んできた役だった。「どんなに小さな役でもその時の自分にとって必要で、多くの気付きやメッセージを与えてくれる。不思議な巡り合わせとしか言いようがない。だからこそ、自分で良い悪いは判断せず、どんな役もがむしゃらにやっていくだけです」

【100%納得する作品を】

「ヤメゴク」を始め、県内で撮影された映画「お盆の弟」(今夏公開)や大泉出身の紫吹淳さんとダブル主演を務めるミュージカル「グッバイガール」(今夏公演)、東野圭吾原作の映画「天空の蜂」(今秋公開予定)など、今春から今秋にかけて話題作への出演が相次ぐ。テレビドラマ、映画、ミュージカルと活動の舞台はバラバラだが、仕事に対するスタンスや目指す役者像にブレはない。「ドラマや舞台は観た人の生き方や考え方を変えてしまう力がある。現場に携わっている僕らの責任は重大。身を削って、100%納得できる作品を作りたい。それは時間との戦いでもある。役柄を深く掘り下げ、『ここだ』という金脈に辿り着くまで諦めたくない。その姿勢が、観る人の心に届く何かを生み出すと信じています」

水島刑事同様、男気あふれる役者魂で演技という終わりなき旅を、愚直に真摯に続けていく。

文/中島美江子
写真/高木昭彦

【プロフィル】Kohki Okada
65年太田生まれ。91年、3人組バンド「To Be Continued」のボーカルとしてデビュー。94年「もしも願いが叶うなら」で俳優業を本格的にスタート。「ナースのお仕事」「レ・ミゼラブル」「SPEC〜結〜」など数々のドラマ、舞台、映画に出演。12年「ぐんま観光特使」に就任した。現在、TBSドラマ「ヤメゴク」(毎週木曜午後9時〜)にレギュラー出演。今夏、ミュージカル「グッバイガール」(8月7〜23日)で主役を務める。東京在住

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