映画でもドラマでも役者の背景はどうしても出てしまうから、真剣に人生を楽しむというか人生を遊ぶことが大切だと思っています
主演映画「柴公園」14日全国公開 8日に地元渋川で先行上映会
映画やドラマなどで、名バイプレーヤーとして圧倒的な存在感を放つ俳優・渋川清彦さん(渋川市出身)。
今月14日から全国公開される主演映画「柴公園」では、柴犬の飼い主役「あたるパパ」を演じる。
今年1月から全国放映された連続TVドラマ「柴公園」の劇場版で、柴犬連れの「おっさん」3人によるたわいもない会話劇が繰り広げられる。
これまでの「クール」なイメージを覆す役柄に挑んだ渋川さんに、「柴公園」や俳優への思いなどを聞いた。
流れに逆らわず、でもその中で自分を貫く
Q主演TVドラマと映画のオファーを頂いた時の気持ちは
「主演だから」という気負いはあまりなくて、どの作品も誘ってもらえたら「やる」という感じです。撮影は昨年10月から12月にかけて行われました。今年1月から全国放映された10話連続ドラマと合わせて撮ったので、かなりのハードスケジュール。ただ、監督が昨年公開の映画「ゼニガタ」でご一緒させて頂いた綾部真弥監督で、事前に内容も分かっていたのは良かったですね。
Qあたるパパを演じてどうでしたか
タワーマンションに住んでいて、独身で、しかも犬を飼っている中年男性。これは何かありますよね(笑)。世間をあまり気にせず自分の好きなことをやっている人物かなと。セリフに書かれた人物を自分なりに読み取って、イメージしながら演じました。脚本家が自分に寄せて「当て書き」してくれたので、「流れに逆らわず、でもその中で自分を貫く」という生き方のスタンスが似ている気がします。共演者からも「あたるパパっぽいね」と言われました。
Q会話劇というスタイルはどうでしたか
とにかくセリフが多くて大変でしたね(苦笑)。ひたすら声に出して繰り返し覚えましたが、全部頭に入っていない状態で現場入りしたのは今回が初めて。毎回、ちゃんと言えるかどうか不安で本当に必死でした。共演者の大西(信満)は事務所が同じなので普段から良く飲むのですが、撮影中はどちらも余裕がなくて一度も飲みに行けなかったです。
一つひとつのセリフに含蓄がある
Q現場の雰囲気は
撮影時間がタイトだったため、とにかく3匹に合わせてやるしかない。犬が動かなかったら抱っこするとか、難しいシーンを撮る前は散歩させて機嫌を取るとか。ハプニングが起きたらどうするか、ではなく常にハプニング前提でスタッフも出演者も準備していました。涙ぐましい努力。まさに、柴犬ありきでした。
Q柴犬との共演はいかがでしたか
犬とのコミュニケーションが最重要事項でしたから毎回、飼い犬役「あたる」との散歩が日課でした。3匹登場しますが、あたるは唯一の男の子。やんちゃで顔の肉がポチャッとしていて、とにかくかわいい。作品を通して、犬を育てる体験が出来たのは面白かったですね。プロ犬だけあって俳優の芝居をしっかり見ていて、凄くカンが良いのにも驚きました。
Q「柴公園」の魅力とは
おっさん3人が、ただしゃべっているだけで派手なことは起こらない。けれど、一つ一つのセリフに含蓄があって何か良いんですよね。批判するでもなく、ちょっと世の中を斜めに見ている感じ。説教くさくなくて、「そうだよね」と多くの人が共感できるところを突いてくる。登場人物の設定も、脚本家や企画者の実体験が元になっているのでリアリティがあるのでしょう。会話劇の場合、ワンカット長回しが定番というか流行りですが、それだけで持たせるのは難しい。けれど、「柴公園」では犬の表情や飼い主との交流、セリフのテンポなど監督や編集の方が飽きさせない努力を凄くされていると思いますね。
Q劇場版の見どころは
連続ドラマでは「あたるパパ」の職業も自宅の中も分からないのですが、映画だと彼の背景が垣間見えるようになっています。エピソードゼロ的な内容。あたるパパがなぜ柴犬を飼い始めたのか、佐藤二朗さん演じるニートの飼い犬をあたるパパがなぜ預かったのかという理由も明かされるし、2人のおっさんとポチママとの距離も近づくのでお楽しみに。
Q役者として心掛けていることは
流れに逆らわず、目の前にきた役を監督の指示に従い自分なりに一生懸命演じることに尽きます。音楽に関わっていた時間の方が長く、劇団に入っていた訳でもないので芝居の技術はまだまだ。ただ、演技がうまいから面白いとも限らない。映画でもドラマでも役者の背景はどうしても出てしまうので、真剣に人生を楽しむというか人生を遊ぶことが大切だと思っています。
来た役を真摯にやっていく
Qラジオ高崎に出演するなど地元での仕事もされていますね
普段、自分から話さないのですが、ラジオではパーソナリティの方が色々聞いてくれるので、それに合わせて話しているという感じです。出演前は地元紙を読んで情報を仕入れますが毎回、行き当たりばったり(笑)。群馬や高崎のことが詳しくなるし、実家にも帰れるし、知り合いとも飲めるし、楽しいですね。
Q故郷・群馬とは
生まれ育った風景を見ると、落ち着くというかホッとします。やっぱり田舎が好きなんですね。東京は便利で住みやすいけれど、群馬は時間の流れも緩やかで楽にいられるところが良いですね。
Q今後やってみたいことは
「こういう役を演じたい」というものはなくて、来た役をその都度、真摯にやってきたい。個人的には、地元の伊香保に仕事関係者が撮影に来て泊まって遊べるような場所を作れたら良いと妄想しています。そこに温泉があれば最高。まあ、夢のまた夢のまた夢って感じですが(苦笑)。
Q群馬のファンにメッセージを
14日の全国公開に先立ち明日8日、地元・渋川市で先行特別試写会を行います。中村緑地公園に屋外スクリーンを立てて2回上映しますが、出演者3人の「おっさん」によるトークイベントや、犬が遊べるスペースもあるので是非、皆さん遊びに来て下さい。心温まる映画と豊かな自然に、きっと心癒されると思いますよ。
文・写真/中島美江子