地域の人とふれあう経験を旅の要素に!(Vol.119)

20~30代の女性を中心に人気の「磯部せんべいサクサクツアー」

都心から90分程にあり、軽井沢や世界遺産「富岡製糸場」の富岡市とも隣接する、観光的な立地にも資源にも恵まれた安中市。旧中山道の面影を残し、峠の釜めしや、あの〝温泉記号〟発祥の磯部温泉、そして鉄道ファンには国内最大のレンガ造りアーチ橋「めがね橋」など貴重な鉄道遺産を拝める聖地としても知られています。

宿泊客は2年前まで50~70代のシニア層がほとんどでした。観光客数アップのため安中市観光機構がまず取り組んだのは、首都圏在住の20~30代の女性を第一ターゲットに、彼女たちの嗜好を徹底的に分析して観光コースや体験型プログラム、物産商品を開発し、さらにそれを効果的に訴求するためのプラットホームを構築しました。

体験プログラムではモニターツアーを催行し、それを追体験したくなるような魅力的なストーリーに仕立て、旅行代理店とも協力してウェブサイトやSNSで発信しています。これまでに開発したプログラムは130を超え、22年前に廃線となった信越本線横川‐軽井沢間を使った「廃線ウォーク」は毎回満員となるほどの人気に。ほかにも「〝もぐる温泉〟砂塩風呂体験」「磯部せんべいサクサクツアー」など地域ならではのプログラムは特に好評です。

また、ターゲット層の若い女性に向けては、例えばテーマは「自己投資」や「希少体験」、3人以上のグループで楽しめる内容を春夏秋冬朝昼晩で検討するなど、旅行サイトを有効活用した緻密なマーケティングと企画でピンポイントの訴求を実施しています。

これらを魅力的に紹介し、予約できるサイト「あんとりっぷ」も開設しました。その結果、2016年度にインターネットからの予約シェアが3%だった20~30代の女性の比率を、たった1年で23%にまで増やすことに成功しました。ただ、データやシステムを駆使した誘致活動は確かに成果を上げていますが、役割として忘れてはならないのは「地域の人とふれあう経験を旅の要素の一つとして盛り込むこと」。地元の高校や菓子店、飲食店らと、安中の特産物である秋間梅林の梅や、地元の醤油醸造元 有田屋の「さいしこみ醤油」を使った新商品の開発に取り組んでいます。

今後への課題はインバウンド事業。隣の軽井沢には多くの外国人が訪れているにもかかわらず、安中市のインバウンドは極端に少ないのが現状です。軽井沢町、富岡市と連携し大きな観光地域として誘致活動を展開し、3市町合同で台湾の旅行会社へ商品造成の提案などを積極的に行っていきたいと思います。

 

一般社団法人安中市観光機構
事業部長 依田 沙希 さん
【略歴】1980年安中市生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートに入社し旅行雑誌・宿泊予約サイト「じゃらん」の運営に携わる。その後、楽天株式会社に入社し、宿泊予約サイト「楽天トラベル」の運営・企画をはじめ、自治体と連携した地方創生事業の立ち上げに携わる。その後、地元安中市へ戻り、一般社団法人安中市観光機構へ入社。

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