芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。
こう見えてわたくし今年で声優デビューから10年。色んな役をやってまいりました。今回はそんな数々の作品の中から、「けいおん」というアニメに出演したときのお話。
このアニメ、軽音楽部に所属する女子高生がバンドを結成し、練習したりお喋りしたりの日常生活を描いた作品で、出演しているのがほぼ女子。わずか3名しかいない男役のうちの一人、彼女たちが通う高校の教師、堀込先生という役を演じました。「この役をやるのは金谷さんしかいない」「金谷さんにピッタリな役だ」とのありがたいご指名を受けて。
「よーし気合い入れて頑張るぞ」と台本を開いたのですが、読めども読めどもセリフがない。堀込先生という役が登場しない。必死になって探したら…あった!堀込先生(咳払い)。30分の番組中、出番は咳払いのみ!「金谷さんしかいない」と言われたのに、咳払いのみ!
仕事内容としてはマイクの前に立って「んんー」という音を発するだけの簡単なお仕事。しかしこれ逆に緊張しますよ。オーケストラで言えば、たった1回だけ出番があるシンバル担当。ワンチャンス逃したら、もう挽回不可能。ページをめくりながら、来る、来る、もうすぐ来る。たった1回の出番が来る。って思ったら緊張で喉が詰まっちゃって、マイクの前で「んんー」。本物の咳払い。収録後「最高の演技でした」と絶賛され、「さすが金谷さん」とおだてられ、「演技じゃなくリアルなんだけど…」という言葉は口に出さず胸の奥へ。しかし、これがきっかけで「けいおん映画版」では出番も増え、今では声優としての代表作になってます。
どんな役でも一生懸命やってるといい事ありますねえ。ピンポーン!あ、次の作品の台本が届いたみたい。ではまた次回!