芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。
東京都内での緊急事態宣言も解除され、徐々に日常を取り戻しつつある昨今。約三カ月近い自粛生活をエンジョイしてまいりましたが、このたびワタクシ「コロナ自粛中なのに、やけに楽しそうな人」として取材を受けました。世界中が新型コロナに怯える中「能天気なバカ」として取材を受けるという身に余る光栄。お笑い芸人としてこんな誇らしい勲章はございません。
前回お伝えした通り、映画「男はつらいよ」全五十作完全制覇。そしてユーチューブチャンネル開設、さらには勝手にはじめた連載「浅草芸人列伝 この芸人はスゴイ!」。
そんな楽しい自粛生活を支えた、心の支えとなる言葉。今回は「ボクの好きな言葉ベスト3」をご紹介したいと思います。
まずは、フランスの哲学者アランという人の「悲観は気分、楽観は意志」という言葉。これ大好物。この言葉聞くだけで、どんぶり飯三杯いけます。ほっときゃ自然と悲観的になっちゃうのが人間。意志の力で楽観的になろうぜ!って意味だと勝手に解釈してます。
そして第二位、ハナ肇とクレイジーキャッツの名曲「黙って俺についてこい」。♪銭のないやつぁ俺んとこへ来い。俺もないけど心配すんな~。そのうちなんとかな~るだ~ろ~う。ボーカル植木等の力強い歌声。なんの根拠もないけど勇気づけられます。
聞いたところによると、僧侶の息子として育った植木等さん。実際には映画やTVの「無責任男」というイメージとは異なり、マジメな性格だったそうです。「スーダラ節」という曲をレコーディングする時も「こんなふざけた曲を歌っていいものか?」と悩み、父親に相談。すると植木さんの父は「この歌の『分かっちゃいるけどやめられない』という歌詞は親鸞の教えと同じだ。仏教の本質を表わしてる」と語り、その言葉を聞いて、ようやく歌う決心がついたという話です。その決意を元にレコーディング。いわば「責任感を持った無責任」。それをふまえると、さらに言葉の説得力がマシマシです。
最後にお届けするのは「天才バカボン」の作者、赤塚不二夫さんの言葉。「自分が一番バカで、劣ってると思ってればいいの。そうすれば人の言葉がちゃんと頭に入ってくる。自分が偉いと思ったら、誰も何も言ってくれなくなる」。これです。
あっちでもこっちでも「自分が正しい」「あなたは間違ってる」と正義の矢が、まるでWiFiの電波のように飛び交ってますが、赤塚先生の言葉を借りれば「バカなりに考えたよ。間違ってるかもしれないけど」っていう姿勢は忘れたくないなあ。バカだけど言いたいことは言う。なので政治家の偉い先生方、すぐバレる嘘ついたり、嘲笑されたり、怒られたりするのは我々芸人の仕事なので、我々の仕事を奪わないでねー。