安野ファン [昨年末、94歳で亡くなった画家・安野光雅さんの絵本を何冊か持っている…]

上州日和タイトル

昨年末、94歳で亡くなった画家・安野光雅さんの絵本を何冊か持っている。視覚的トリックを用いただまし絵、リアルなタッチでち密に描かれる身近な道具や食べ物の絵は、いたずらっ子のような自由な発想にあふれている。
 
ブラティスラヴァ世界絵本原画展受賞作の「あいうえおの本」(1976年、福音館書店)を、小学生の頃、父親からプレゼントされた。自らの子育ての際も、この絵本を広げたが、久しぶりに手に取って開いてみる。
 
最初は「あ」のページ。「あ」の形の木製オブジェの絵と、おいしそうな「あんぱん」と「あり」の絵。その周りには、「あさがお、あざみ、あひる、ありくい、あわび…」など、頭に「あ」が付くもので埋め尽くされ、最後の「ん」までたっぷりと安野ワールドが展開している。
 
40年以上前に描かれた絵本なのに、全く古さを感じない。安野さんから「面白いですか、分かりますか」と問いかけられているよう。いつの間にか知的好奇心をくすぐられ、改めて大ファンになった。あとがきには、「古い歴史をくぐり抜けたものの形には、(中略)理にかなった美しさが備わっている」と記されているが、まさに安野さんの絵に当てはまる。今後も多くの世代に安野ファンが増えそうな予感がする。

(谷 桂)

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