山笑う [野山に目をやると、一斉に芽吹いた草木が…]

野山に目をやると、一斉に芽吹いた草木が陽光を浴びて立体的に輝き、山全体が笑っているように見えます。待ちわびた「山笑う」季節の到来です。桜前線は北上を続け、北部の山沿いではまだ見ごろが続いているでしょうか。

冬の足音は、県境の山並みを越え、川の流れに沿って聞こえてきました。遠く望む谷川連峰や武尊山、西は浅間山から榛名山、小野子山や子持山、赤城山と、上州の山々を白く染め上げました。「山眠る」の季語がピタリとはまる印象でした。

桜前線はその逆ルートで、冷たい空気をゆっくりと北へ西へと押し返すイメージ。東西南北、平野部と山間部で気候も気温もまったく異なる群馬の自然のダイナミズムに圧倒されます。

年度替わりは仕事が立て込み、未明まで職場で缶詰になる日が続きました。「沸騰した脳みそ」を帰宅前にクールダウンしようと、ひそかに車を走らせては、人知れず咲き誇る各地の夜桜を堪能しました。日中も通勤途中でハナミズキやモクレン、水仙、菜の花、タンポポなどの花々に癒やされています。

「まん延防止等重点措置」が東京、京都、沖縄でも始まり、適用地域は大阪、兵庫、宮城と合わせて6都府県に。変異株が感染拡大の「第4波」を引き起こしつつある中、群馬県内でもようやく高齢者を対象にワクチン接種が始まりました。なお我慢の日々が続き、気の緩みは禁物です。それでも、穏やかに笑う遠くの山並みや身近な草木をめでる気持ちを忘れずに過ごしたい。がんばりましょう。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

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