11月11日はチーズの日
ワインと一緒に、サラダのトッピングに、加熱してとろりとしたチーズフォンデュに…。「11月11日」はチーズの日。チーズに親しんでもらおうとチーズ普及協議会らにより制定された。日本人のチーズ消費量は統計を取り始めた1973年に比べて約5倍(農林水産省)。私たちの食をますます豊かにしてくれている。自然に恵まれ酪農が盛んな群馬でも、良質な生乳を使ったこだわりのナチュラルチーズが作られている。今週は、コンクールで受賞した神津牧場のチーズをはじめ、昨年立ち上がった田園プラザ川場の工房で作られるイタリア仕込みのチーズなど6工房のチーズを紹介する。
伝統の牧場から生まれた味 コンクールで最優秀部門賞に
下仁田 神津牧場
日本最古の西洋式山岳牧場を運営する神津牧場(下仁田町)。福沢諭吉の下に学んだ神津邦太郎が、明治20年に開場した標高千㍍の牧場では、ジャージー牛200頭が放牧されている。
脂肪分の高い搾りたて牛乳を使った「自然の贈り物」であるチーズ。須山哲男場長は、「500mlの生乳からは50㌘のチーズしかできない」と話す。凝縮されたチーズ作りに熱心に取り組むのが、加工部の菊池実さん(42)。「いつも一緒にいる牛のおかげで、新鮮なミルクを使えます。青草を食べた牛乳の黄色いチーズを、ゴールデンチーズと呼ぶ人もいますが、おいしい牛乳からは、おいしいチーズができますね」と笑顔で胸を張る。
チーズの種類は主に3種類。フレッシュタイプでもちもちした弾力があり、女性人気ナンバーワンの「モッツァレラ」。クリーミーで料理に適し、加熱するととろけて白ワインに合う「ゴーダ」は、食堂のハンバーガーにも使用される。6カ月から1年間と長く熟成させ、深いコクと濃厚な味わいでほのかな渋みがクセになる「チェダーチーズ」。他にも、ゴーダをベースにした「トマト&バジル」、「ブラックペッパー」やカレースパイスの一種である「クミンシード」入りも好評。地元のネギを混ぜた「下仁田ネギチーズ」も人気が高いという。
隔年で行われる国産ナチュラルチーズコンクールの「ジャパンチーズアワード2020」で、「トマト&バジル」が、非加熱、加熱圧搾バラエティ部門で金賞かつ最優秀部門賞を10月に受賞した。さらに、非加熱4ヶ月以上熟成の部門でも「ゴーダ」が銅賞に輝いた。「神津牧場の味が評価されてうれしい。今後も自信を持ってチーズ作りをしたい。皆さんぜひ一度、味わってください」と菊池さんは呼び掛ける。
※ゴーダ、チェダー、モッツァレラ、トマト&バジル共に100㌘あたり650円(税別)。他の乳製品も牧場内の売店で購入できるほか、ホームページ(http://www.kouzubokujyo.or.jp/)からのオンライン注文もできる。「道の駅しもにた」でも常時販売中。問い合わせは同牧場(0274・84・2363)。
イタリア仕込み「食べる人が忘れられない味を」
川場 KAWABA CHEESE
道の駅川場田園プラザの園内に昨年4月、チーズ工房「KAWABA CHEESE」が誕生した。製造するのは、イタリアでチーズの製法を学び、東京のイタリア食材専門店「イータリー・ジャパン」チーズ部門の責任者を務めた片岡恵子さんら。本場イタリア仕込みのチーズを手掛ける。工房すぐ近くの牧場で採れた新鮮な生乳と、武尊山の天然水を使用。「モッツァレラ」「リコッタ」といった定番のほか、モッツァレラの生地で生クリームとモッツァレラを細かく割いた生地(ストラッチャテッラ)を包んだ「ブッラータ」など、イタリアのフレッシュチーズ4種類を製造。なかでも、本場イタリアでは一般的だが日本ではかなり珍しい「ストラッキーノ」は、わらび餅のような食感が特徴。同プラザや首都圏でもファンが増えているという。
園内のフードトレーラー「カワバチーズスタンド」では、ワインやパンと一緒に楽しめるチーズ3種の盛り合わせを販売(11月末まで)。
片岡さんは「チーズ作りは『一期一会』。常に同じ味を作り続けることが難しい中で、工夫を重ねながら、食べる人が忘れられないと思える味を目指しています」と話す。
※モッツァレラ税込800円(125g)~、リコッタ同700円(125g)~、ストラッキーノ同800円(100g)~、ブッラータ同1350円(125g)。同プラザで販売するほかWeb(https://www.denenplaza.co.jp/shop/items/)からの注文も可。問い合わせは(0278-52-3711)。
ミルクの優しい味わいを感じられるチーズ
前橋 チーズ工房 スリーブラウン
前橋の赤城南麓にある「スリーブラウン」は、牛の飼育からチーズの加工までを一貫して行うチーズ工房。「牛を飼ってチーズを作りたい」。そんな夢をかなえた松島俊樹さん(43)、薫さん(同)夫妻が営む店のショーケースには、ミルクの優しい味わいを感じることのできる手作りのチーズが並ぶ。
北海道出身の俊樹さんと、前橋出身の薫さんは、全寮制の農業高校・愛農学園(三重県)で出会い2001年に結婚。北海道でチーズ製造を学んだ後、群馬で酪農ヘルパーや牛削蹄師(さくていし)などの仕事をしながら資金を貯め2011年に酪農をスタートさせた。チーズに適した濃厚な乳を出す牛「ブラウンスイス」3頭とともに始めたことから、工房に「Three Brown(スリーブラウン)」と名付けた。「チーズ作りに大切なのは良いミルク」と、10頭に増えた牛すべてに名前を付け、愛情をかけて大切に育てている。現在店舗では10種類のチーズを販売しており、弾力のある食感が特長の「モッツアレラ」は、定番のカプレーゼのほか、スライスしてわさび醤油をつける食べ方もおすすめ。熟成を楽しむ「ジル」は、ワインはもちろん日本酒にも合うそうだ。車で30分かけて隔週で訪れるという前橋市の女性(50)は、ひょうたん型に成形した「カチョカバロ」が好きと話す。そのままでも美味しいが、厚めに切り焼いて食べる「カチョカバロステーキ」も絶品とのこと。「どこよりも美味しいチーズを」と話す夫婦が作る、生乳と天日塩のみで作られた本物の味わいを求め、県内外からファンが赤城南麓に足を運ぶ。
※モッツァレラは税込み567円。さけるタイプ(同)411円。カチョカバロは1袋(約200グラム)1000円前後。牧場内の店舗は毎週水曜・日曜、月末の土曜に営業(午前10時~午後4時)するほか、ホームページ(https://three-brown.jp/)からの注文もできる。問い合わせは(027・257・8052)。
「みんなが食べやすい」チーズを 高崎の工房から
高崎 ホワイトファーメント
高崎市箕郷町にある小さな工房で、毎日午前2時半に起きチーズをはじめとする乳製品作りに地道に励むのは、ホワイトファーメント代表の高橋一夫さん(47)。県内外の酪農家と契約し委託製造を行っている。県内では、太田の松井牧場、昭和村のロマンチックデーリィファーム、嬬恋村の松本牧場の生乳を、それぞれ日替わりで仕込み、製造から包装、納品まで一手に手掛ける。「同じ種類のチーズなら作り方はだいたい一緒。でも、生乳が違うからそれぞれの美味しさがあるんだよね」と高橋さん。
親の営む牛乳工場で営業から製造まで経験し、4年前に独立した。「実は、輸入チーズみたいに強烈なにおいのするのは苦手(笑)。だから、俺が美味しいと思える食べやすいチーズを作れば、みんなが喜んで食べてくれると思う」と、日々研究を重ねている高橋さん。「これからは6次産業も視野に入れ、様々な農家やお店ともどんどんコラボしていきたい」と意気込む。
直営店では試食や手作り体験も
同社から10分ほどのところに同社製のチーズを販売する直営店「地球屋バターファクトリー」(榛東村)がある。遺伝子組み換えでない飼料を与えた牛の乳を使用したプレミアムなクリームチーズやモッツァレラ、さけるチーズ3種(プレーン、ブラックペッパー、スモーク)、飲むチーズなど多彩なナチュラルチーズに加え、犬用チーズなども販売。チーズはその場で試食ができる。このほか、さけるチーズと、モッツァレラの手作り体験も楽しめる。
※味噌漬けナチュラルチーズ(100g)税込880円ほか。年中無休。午前10時~午後4時。問い合わせは地球屋バターファクトリー(0279-54-0100)。facebook(https://www.facebook.com/chikyuya.butter/)。
大切に育てた牛の恵みをフレッシュチーズに
渋川 べーべ
渋川市北橘町でホルスタインとジャージー牛合わせて45頭を飼育する嶌村(しまむら)牧場。家族経営の小さな牧場だが、飼料の生産、牛の管理から乳製品の製造・販売まで一貫して行う。1998年から「ベーベ工房」の名でモッツァレラチーズ、リコッタチーズをハンドメイドで製造。モッツァレラはイタリア伝統の製法で、すべての工程を手作りしている。リコッタチーズは乳清(ホエー)に牛乳を加え、さっぱりとして消化の良いチーズに仕上げた。離乳食にも使えるほか、ジャムや果物を添えてスイーツに、また加熱してイタリア料理の材料としても利用できる。
※モッツァレラ(130g)、リコッタ(180g)ともに650円。毎週金曜日に道の駅こもちに並ぶ。電話やファクスでも注文可。問い合わせは同工房(0279-25-0864)へ。
厳選された契約農家の生乳と伝統的製法
太田 東毛酪農
県内の契約農家の安全な生乳で、乳製品の加工を行っている。人気のカマンベールは、美味しいチーズのために厳選した農家の生乳を使い、伝統的な製法で造る。チーズを覆った白カビが醸し出す味わいを活かしつつ、熟成の程よい状態のところをレトルト処理して保存性を高めている。「第4回オール・ジャパン・ナチュラルチーズコンテスト」のソフトタイプチーズ部門で優秀賞受賞。オランダのチーズ、エダムタイプの「酪農組ナチュラルチーズ」は塩分を抑え、クリーミーでくせの無い味わい。オランダのゴーダチーズを日本人の味覚に合わせソフトに仕上げた「利根坊」は夏と冬の季節限定商品。熟成期間中のカビの防止とチーズ表面の殺菌のためロウでコーティングしてある。
※「手造りカマンベールチーズ」(税別540円、100g)、「酪農組ナチュラルチーズ」(同690円、150g)、「利根坊」(同1300円、180g)。webショップ(http://tomo-milk.shop-pro.jp/)、ミルクランド東毛ニコモール店(太田市新田)ほかで購入できる。問い合わせは同組合(0276-57-0111)へ。