「後輩たちに現在のお仕事や学生時代について話してもらえませんか?」 昨夏、県立女子大の小林良江学長から後期授業の一コマを打診された。軽い気持ちで引き受けたものの、講義が近付くにつれ気が重くなってきた。
大学生活の思い出や就職活動、入社後の仕事内容、職場での役割について40~50分喋らなければならない。遠い記憶を引っ張り出しながら当時の状況や心境を時系列で書き出していく。「あの時ああしていれば」 嫌だったことや忘れたい過去が鮮明に蘇ってくる。一方、今こうしているのは偶然ではなく必然の積み重ねだったのだなあと妙に納得したり。
先月行われた講義では、「特に困難だったことや失敗談を話して欲しい」という小林学長のリクエストを受け、就活や転職での挫折経験など隠しておきたかった事実も率直に後輩たちに伝えた。かなり恥ずかしい体験だったが、お蔭で自分の行動や考え方の癖、漫然と抱えていた不安や不満、置かれている状況や課題などを客観視できたし、それらの改善の糸口が少しつかめたような気がした。
卒業シーズンは人生の節目の季節でもある。環境の変化に不安になったり現状に納得していない人もいると思うが、これまでの歩みを冷静に見つめ直すことで多くの発見や気付きが得られるだろう。自分を知ることは、新たな一歩を踏み出す力になる。少々面倒な作業だが、新年度に向け自分の歴史を振り返ってみてはいかがだろうか。
(中島美江子)