芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。
新型コロナの影響による舞台の休止。その後の再開から約4か月余り。私の所属する漫才協会の客席にも、ようやくお客さんが少しずつ戻り始めて来ました。ありがたい限り。今回はそんな漫才協会が主催するイベント「漫才新人大賞」のお話です。漫才の大会と言えば、一般の方がまず思い浮かべるのが「M1グランプリ」だと思います。しかし、芸人の世界では「M1」よりも遥かに権威があるのが「漫才新人大賞」なのです。M1の賞金がわずか一千万円であるのに対し、漫才新人大賞の賞金は何と十万円!べらぼうな金額です。さらにM1がTVのゴールデンタイムで放映されるのに対し、漫才新人大賞はTV放映なし。シークレットタイムにノーオンエアー。希少価値!
そんな希少な漫才新人大賞決勝戦に出場する希少な9組の中から、希少価値コンビ3組をご紹介したいと思います。
まず写真左側、上から4番目の「はまこ・テラこ」。こちら夫婦漫才ならぬ元夫婦漫才です。元々は正式な夫婦として漫才をやっていましたが、本人いわく「性の不一致」により離婚。離婚はしましたが舞台上はコンビを続ける元夫婦漫才師です。しかも、離婚はしたけれど同じ部屋に住み、同じ布団で眠り、同じ夢を見る。という摩訶不思議なカップル。元ダンナの方は未練たっぷり。ヨリを戻したいらしく漫才中も元嫁に触りたがるのですが、元嫁が一切拒否。「触んないでよ!もう他人なんだから!」と言うだけで客席爆笑!
リアル元夫婦だからこそ出来るドキュメンタリー漫才。ザ・ノンフィクションです。
そして写真左側上から2番目の「にゃんこスター」。2017年のキングオブコントにコンビ結成5か月で出場し準優勝。そして今回、満を持して漫才新人大賞に出場。しかしこのコンビ、漫才は一切やりません。やるのは「縄跳び」のみ。
ひたすら難易度の高い技を繰り出し、お客さまから拍手を頂く。その姿は「令和の海老一染之助・染太郎」です。「いつもより余計に回しております」と縄を回して飛びまくる「アンゴラ村長」は汗だく。一切飛ばない「スーパー三助」は涼しい顔。「これでギャラはおんなじー」です。
そして最後、この2組に挟まれたコンビ「2世代ターボ」。左側の男にご注目。この男河崎健男。何を隠そう私と同期です。ひょっとしたらちょっと先輩です。芸歴30年超えの新人!そもそもこの漫才新人大賞の出場資格が「コンビ結成20年以内」という、ゆるゆるルール。どれだけキャリアがあっても新しくコンビを組めば出場可能。新人大会なのに年齢制限なし。この河崎健男、一説によれば年齢が70歳近いと噂されています。新人なのに老人。新人の概念を覆す驚異の新人。あなたのその目で確かめてみて下さい。