芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。
新型コロナウィルスの流行で、すっかりお馴染みになったソーシャルディスタンス。各方面、様々な職業の方に影響が出ていると思いますが、その中でも一番影響を受けてるであろう職業、それは漫才師ではないか?今回はそんなお話です。
通常であればセンターマイクを立て、横に並んで二人で漫才をする。王道の漫才スタイル。しかし、これが三密のうちのひとつ「密接」に当たるということで、今現在漫才協会ではこのスタイルは禁止。禁じ手となっております。
では、どうするのか?各自工夫をこらして試行錯誤。センターマイクを二本、間隔を空けて立て、離れた形で漫才をする「チャゲ&飛鳥スタイル」。センターマイク一本で距離は近づくけれどお互いフェイスシールドを付けて漫才をする「完全防具をつけたままフルコンタクトで打ち合う極真空手スタイル」。二人ともハンドマイクを持ち、お互い移動しながら漫才をする「ラッパースタイル」。新しい漫才様式が続々と登場。
各漫才師それぞれが慣れないスタイルに四苦八苦していますが、漫才協会の重鎮「青空球児・好児」師匠と「おぼんこぼん」師匠は、コロナ以前からのラッパースタイル。ハンドマイクで舞台を駆け巡りながら今も昔もまったく影響なく漫才をしております。
青空好児師匠ことMCコージは、カツラをかぶっている芸能人の名前をステージ上で暴露。隣でMCキュージは「ゲロゲーロゲロゲーロ」とライム(韻を踏むこと)を繰り返す。片や「MCおぼん」と「MCこぼん」はお互いをディスり合うラップバトルを繰り広げております。
変わったところでは、名前の通りコントしかしない「コント山口君と竹田君」。コント中に頭を叩くツッコミが「濃厚接触」に該当するという事でコントではなく漫才に転向。名前はコントなのにコントしない、という異業種参入。シャープがマスクを作り始めたように、コント山口君と竹田君が漫才に新規参入。各企業生き残りをかけて必死です。
前向きな人たちがいる一方「コロナ離婚」「コロナ倒産」同様、「コロナ解散」するコンビも出て来ました。漫才に対する気持ちも、相方への気持ちもソーシャルディスタンスしてしまうのも無理ない事なのかもしれません。
そんな状況でもお元気なのが大ベテラン、ナンセンス岸野師匠。元々ナンセンストリオで活躍し、漫才師ナンセンスを解散後は一人で舞台に立っております。御年85歳! いまだ漫才への思いは強く、他のピン芸人に対して「コンビ組んでよー」とラブコール。断られても次から次へ「漫才やろうよー」とラブコール。85歳にして新しい相方募集中。新型漫才への意欲満々。元気な先輩を見ると勇気をもらえます。漫才協会のアマビエ、岸野師匠のパワーで、悪霊退散!