7年前に起きた東日本大震災の後、各地を訪ねました。仕事以外にも被災家屋の片付けボランティアに出かけたり、復興応援と称して旅したり。中でも多いのが岩手・陸前高田市です。
大津波で甚大な被害を受け、人口の8%が死亡・行方不明となりました。友人の友人がこの地の保健師だった縁で、看護師や医師の仲間たちが医療支援に入るように。様子を聞くうち、住民のための地域交流拠点を作る準備に伴走するようになりました。
出来た「朝日のあたる家」は240平方メートル。木造平屋ですが天井は吹き抜けで高く、木の温かみを感じる内装が特徴です。床暖房で冬も履物なしで暖かい。「プレハブ仮設ばかりで気が滅入る」という嘆きに応えたいと設計。建設・運営費には、朝日新聞に寄せられた震災募金があてられています。
目指したのは、「まちなかの居場所」であり「大人の保健室」。いつでも立ち寄り心緩めてもらえるよう、笑顔で迎える常駐スタッフがいて、お茶を出される。ピアノがあり、絵本や小説を手に取れる。先月催した開設5周年記念の集いには、市長ら招待客を大きく上回る数の地元住民がいらして、祝って下さる様子にほっとしました。
「津波があったことは不幸だけれど、今でもなければ良かったと思うけれど、そのおかげで新しい出会いを得られたのは幸せだった」。家の利用者から以前聞いた言葉です。大きな苦難への怒りと悲しみ、やるせなさが想像できるだけに、そのたくましさ、慎ましさにいつも心打たれるのです。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)