芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。
以前この連載でもお伝えしましたが、コロナ自粛中にワタクシ、映画「男はつらいよ」シリーズ全五十作を一気に鑑賞するという偉業を達成しました! その後も映画熱、特に昭和の日本映画への熱が冷めやらず「仁義なき戦いシリーズ」「黒澤明監督作品」「岡本喜八監督作品」「小林旭の渡り鳥シリーズ」「高倉健の昭和残侠伝」などを見まくっております。令和の時代に平成を飛び越え昭和にタイムスリップ。ジャニーズ風に言えば、平成ジャンプです。そんな昭和への旅路の中でたどり着いたのが、梶芽衣子さん主演の「女囚さそり」シリーズ。今回はこの映画のお話をさせて頂きます。
愛した男に裏切られ、刑務所に入れられた女、松島ナミ。看守や他の受刑者たちのイジメ、リンチを耐え忍び、刑務所を脱獄し恨みを晴らす。大まかなストーリーはこんな感じです。さてこの映画、何が凄いのか? まず一つ目には主役である梶芽衣子さんがほとんど喋らない。殴られても蹴られても踏まれても揉まれても喋らない。ただただ相手を睨みつける。この目力の迫力。そして心を許す相手には穏やかなまなざし。目だけで見せる演技力。こんなに喋らない主人公って梶芽衣子とミスタービーンくらいですよ。映画の内容全然違うけど。
そして二つ目が演出の斬新さ。リアリティを度外視した映像美です。よく「血の雨が降る」なんて例えをしますが、この映画、ホントに血の雨が降ります。空から赤い雨が降ってきます。どういう事? なんて頭で考えてはいけません。身をゆだねましょう。怒り狂った女性の顔が急に歌舞伎のくま取り風になったりもします。なぜ? 考えるな!感じろ!クレームやコンプライアンスに怯える昨今とは異なり、いい意味でトチ狂ってます。
そして何といっても主演の梶芽衣子さんの美しさ。この映画の頃は25歳。現在は73歳ですが、今なお美しい。芽衣子熱に浮かされて彼女の著作「真実」を拝読しましたが、驚きのエピソードが続々と登場します。「女囚さそり」を撮った後に結婚して引退するはずだったのが思わぬヒットで辞められなくなり、お相手の方ともギクシャクして破談。その時言われた「一生結婚せず仕事を続けて欲しい」という彼の言葉を守り生涯独身をつらぬいている事。別の作品である「修羅雪姫」の大ファンだったクエンティン・タランティーノ監督がリメイクしたのが大ヒット映画「キル・ビル」だという事。海外にもファンが多く映画出演の依頼もあるが「日本語でしか芝居はしたくない」と断っている事。生き方までも美しい芽衣子様にシビレっぱなしです。
さらに70歳を過ぎてから「ロックを歌う」という新たなチャレンジ。漫才協会の師匠たち同様、先輩が元気だと自分にも勇気もらえますね。芽衣子姉さん、ありがとう!