song for your smile
子どもの笑顔が僕の幸せ
NHK・ Eテレ子ども向け教養番組「フックブックロー」にレギュラー出演している歌手・谷本賢一郎さん(40)。温かく澄んだ歌声は、子どもたちのみならず世代を超えて受け入れられている。今春から安中市の事務所に籍を移し群馬での活動にも力を入れる谷本さんに、歌うことの意味を聞いた
「深呼吸」が大切
Qユニークな髪型ですね。
「歌手ボブ・ディランが好きで同じパーマにしたかったのですが、髪質が違うと言われて、このツイストパーマを勧められました。13年目になりますが子どもに覚えてもらえるので、本当に良かったと思います」
QNHK・Eテレ「フックブックロー」ではどんな役柄でしょうか?
「古本屋『日々はんせい堂』の店員・平積傑作(ひら づみ けっ さく)役です。傑作は、自分と同じ〝のんびりした性格〟なので楽しみながら演じることができています。僕以外のキャラクターはすべて人形なのですが、みんな一緒に楽しく歌っています」
Qどんな曲を歌っていますか?
「子ども向けの歌だけでなく、親やお年寄りなども楽しめる童謡や懐メロ、ポップスも歌います。3世代が楽しめる番組を目指していますので、子育て家族にリフレッシュしてもらえればうれしいです」
Q子どもの前で歌うときに気を付けていることは?
「子どもが初めてその歌を聞く場合は、その印象がずっと残るかもしれないので責任を感じます。日本語の響きを大事に、歌詞の意味を考えて歌うことを心がけています」
Q子どもたちが大好きな番組オープニング曲「青空しんこきゅう」は、どんな思いで歌っていますか?
「急いでいるときほど、深呼吸してのんびり行こうという曲です。子ども向けの歌ですが、親へのメッセージソングだと理解しています。仕事でも子育てでも、無理せず、ちょっとひと息つくことがとても大切なのだと思います」
歌手を目指して上京
Q歌手になったきっかけは?
「子どものころから歌手になるのが夢でした。ただ田舎育ちだったので歌手という職業がイメージできませんでした。高校卒業後に信州大学繊維学部機械学科へ進学、卒業後に埼玉県の機械会社に入社しました。でも機械が得意じゃないので(笑)、つらい社会人生活を2年間も送っていました。人生一度なので後悔しないためにも歌手に挑戦したいと思い、退職して東京へ出ました」
Q上京後は?
「飲食店で働きながら店内で演奏をしていました。でも3年間は仕事がなく現実は甘くないと実感しました。3年後、知人の紹介などで仕事が増え始め、そのあとに劇団『ザ・ニュースペーパー』から誘ってもらいました。そしてフックブックローのチャンスをいただきました」
Q多ジャンルの曲を歌いますが?
「僕は自分の曲を歌いたいというよりも、純粋に良い歌を歌いたい。僕の声を多くの人に聞いてもらいたいという思いが強いです。その中でも『なまえ』(鈴木健士作詞・山移高寛作曲)は歌詞が素敵で、自分にとって大切な曲です」
磯部温泉から再出発
Qこの春から安中の事務所へ移籍しましたが経緯は?
「劇団との両立が難しくなり、今後を考えていたときに安中の事務所から誘っていただきお世話になろうと決めました。磯部温泉という場所もとても面白いなと思いました。歌はどこでも歌えますし、東京にすべてがあるとは思っていないので違和感はありませんでした」
Q群馬の印象は?
「磯部、草津、伊香保、四万など温泉のイメージが強いですね。また北軽井沢や嬬恋は大好きな風景です。学生時代はよくドライブに来ていました。今後は地域のイベントなどにも参加したいと思っています」
Qこれからの活動は?
「遠回りしましたが、歌手としてやっといま自分のやりたいことができるようになってきました。夢が少しずつ叶っているって思います。子どもたちと一緒に歌いながらも、ソロ歌手・谷本賢一郎としての世界観も伝えていきたいと思います。磯部から新しいスタートを切りたいです」
Q「歌」とは何でしょうか?
「歌うことは子どものころからの夢でしたし、コンサートに来てくれた人たちに歌を届けるのが一番の喜びです。そして多くの人を笑顔にできるように、これからも歌い続けていきたいと思います。『song for your smile』。これは次のアルバムのサブタイトルなのですが、みんなの笑顔が僕の幸せです」
聞き手・谷 桂/撮影・伊藤寿学