豪雨の影響で運休していた谷川岳ロープウェイが再開しました。総局のベテラン記者が撮影した色鮮やかな写真(群馬版紙面は残念ながらモノクロ掲載、デジタル版はカラー)に誘われて、ひとり空中散歩を楽しみました。
ふもとの木々は赤、オレンジ、黄色……。ゆく秋を惜しむ名残の紅葉の競演です。天神平駅(1319㍍)からリフトに乗り継ぎ天神峠駅(1502㍍)に着くと、赤く染まる山々と真っ青な空のコントラストに息をのみました。
冬の訪れを予感させる心地よい冷気は、落ち葉や枯れ草、湿った土が醸し出す芳香を帯びています。人影のない峠でマスクを外すと、谷川岳山頂部を流れる雲を眺めて冷気を胸いっぱいに吸い込み、熟成された秋の香りに酔いしれました。
1カ月半ほど前まで勤務したコロナ禍の東京都心では、電車内や雑踏、社内でも人との距離を気にして絶えず緊張を強いられ、季節の移ろいを感じる余裕など皆無。重苦しい空気の中で深呼吸さえ忘れていたなあ。
帰途、立ち寄った「みなかみ町営温泉 三峰の湯」では、農作業を終えた地元のみなさんが内湯で実りの秋を語らっていました。割り込むように足を入れると、かなりの「あつ湯」! 飛び上がって露天風呂に逃れました。ここでも草木の芳香とつるつるすべすべの泉質を堪能し、すっかり長湯に。心身ともに芯まで温まりました。さあ、明日からまた頑張ろう。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)