芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。
いよいよ差し迫って参りました東京オリンピック。この時期になってマラソンコースの変更、お台場の海水汚染など様々な問題が続出しております。本当に開催できるのか?辞めた方が良いんじゃないか?いや今更返上は無理だ!色々な意見が飛び交っておりますが、私が所属している浅草漫才協会でもこれと似たような事態が勃発いたしましたので今回はその話をお届けいたします。
その名も『漫才協会楽団』問題です。略して漫協楽団。漫才協会に所属する芸人たちによる音楽バンド。噂によれば十年ほど前に結成されたものの最近ではまったくの活動停止状態。漫才協会の中でも知る人ぞ知る存在だったようです。その漫協楽団を「再結成しよう!」と立ち上がったのが、コンビ仲の悪さでお馴染み『おぼんこぼん』のおぼん師匠。オリンピックは四年に一度ですが、こちらは六年ぶりの再開。「経費がかかりすぎる」「他の芸人の出演時間が少なくなる」「まずコンビ仲をなんとかしろ」などの反対意見もあったのですが、漫才協会の森喜朗ことおぼん師匠の独断で強引に開催されました。
開催中も問題続出。まずベテラン芸人のゆうきたかし氏。淡谷のり子の「別れのブルース」を歌ったのですが、ビブラートが長い。長すぎる。♪窓を開ければあああああああああああああ~港が~見えるうううううううううううう~。バンドが8小節目を演奏してるのに歌が遅れてまだ4小節あたりをうろうろしております。中距離走なら周回遅れ。
そしてドラムの『すず風にゃん子』師匠。ベテランの師匠だけあって見事なドラムさばき。しかしベテランなだけあって体力にも限界が…。ゆっくりな曲は完璧なのですが、早いリズムの曲になるとドラムさばきに疲れの色が…。時々ドラムの音が聞こえなくなり、振り返ると途中休憩…。3分戦って1分休むボクシングスタイル。それとは対照的に相方の『すず風金魚』師匠の方は歌う前からストレッチに余念がなく、都はるみの『好きになった人』の間奏でステージを飛び降り客席を一周。再びステージに駆け上がり踊りながら二番を熱唱。再び間奏で客席をを一周。歌とダンスとランニングのトライアスロンを見事に披露していました。
その他、ゲストで登場した三遊亭小遊三師匠のトランペット、ナイツ塙くん土屋くんのお母さん二人の熱唱などもあり、会場のお客さんも大喜びでした。
次回、四年後か六年後か分かりませんが、バンド再結成の際には初期メンバーのこぼん師匠も参加し、コンビ仲直りして頂きたいと思っております。漫協楽団の演奏はしばらくありませんが、漫才協会の興行は続行中。IOCならぬマンザイCの祭典『漫才大行進』。浅草東洋館でお待ちしております。