古くから織物のまちとして発展してきた桐生市は、今年3月に市制施行100周年を迎えた。伝統を守りつつ、時代の変化に対応した新たな文化を生み続ける「粋なまち」として発展する桐生市は、「街の住みここち『愛着のある街・自治体』ランキング2020(全国版)」(大東建託)で10位にランクインするなど近年、魅力上昇中だ。今号では、大正・昭和・平成・令和と4つの時代にわたり発展してきた桐生市にスポットを当て、そのあゆみを振り返る。また、100周年記念事業や定番のお出かけスポット、話題のイベントや飲食店など、魅力あふれるまち「桐生」の楽しみ方を紹介する。
※おでかけの際は、感染対策をお忘れなく。
100年のあゆみ
織都として発展
「西の西陣、東の桐生」とも呼ばれ、織物のまちとして発展してきた桐生市は、全国84番目、県内3番目の市として1921(大正10)年3月1日に誕生した。昭和期に数多く建てられたノコギリ屋根の工場は、今では桐生の産業の象徴として親しまれている。デザイン、撚糸、染め、織り、編み、刺繍、縫製など企画から製品化までの様々な技術の工程を担う企業が今も市内に多数あり、桐生の経済を支えている。
市は2013年に同市出身の女優・篠原涼子さんを観光大使に任命。篠原さんを起用した市の公式観光ポスターには桐生織の図柄が取り入れられ、シンプルかつ斬新な構図も話題となった。
水害からの復興
太平洋戦争後は、カスリーン(1947年)やキティ(49年)などの大型台風が相次いで襲い、市内は甚大な被害を受けた。しかしその後、桐生が岡公園動物園の開園(53年)、桐生競艇の開始(56年)、新庁舎落成(65年=織姫町)など急速に復興を遂げていった。64年には、春の商工祭、夏の祇園祭・七夕祭、秋の桐生祭、その他地域の祭礼などをまとめて「第1回桐生まつり」として開催し、現在の桐生八木節まつりへと発展した。
平成の合併を経て100年へ
2005年6月、勢多郡の黒保根村と新里村が桐生市と編入合併し、新しい桐生市が誕生した。
11年には市制90周年を記念して、ノコギリ屋根の工場をモチーフにした市のマスコットキャラクター「キノピー」がデビュー。胸に市章をあしらい、渡良瀬川の青や自然の緑などを取り入れた。3つの連続する屋根は合併した3市村の連携や融和、将来の発展をイメージしているという。
今もなお「球都桐生」
織都桐生は「球都桐生」とも呼ばれ、古くから野球が盛んな地域。旧制桐生中学(現桐生高)は昭和時代に甲子園準優勝を2回も成し遂げるなど、強豪校に。桐生高は春・夏を合わせて26回甲子園出場した。99年には桐生第一高が県勢初の全国制覇を成し遂げた。昨夏、コロナ禍で開催された群馬県高校野球大会では、12年ぶりの夏の県大会優勝を果たすなど、「球都桐生」は今なお健在だ。
粉ものグルメで町おこしも
桐生の食といえば、ソースカツ丼や、超幅広の麺「ひもかわ」など粉ものメニューが多彩。ほかにも、じゃがいも入り焼きそばや、花ぱん、げんこつドーナツなど炭水化物多めの食品は、ご当地グルメとして地元民に愛されて続けている。
これに着目した民間団体はコロナ禍で苦境にある飲食店を応援しようと「炭水化物なまち桐生」実行委員会を立ち上げ、食のイベントを開催。新たな町おこしを仕掛けている。
市政100年様々な記念事業
桐生市は、市制施行100周年を記念した様々な事業を実施。ロゴマークやキャッチフレーズを新たに作成したほか、「オリジナル記念切手」(完売)や「きりゅう発タイムカプセル2001(開封・展示)」などの事業を行った。今夏には「球都桐生野球史展示会」、秋には「NHKのど自慢」「大相撲桐生場所」なども予定している。数ある記念事業の中から、開催中の企画やこれから楽しめるイベントなどを紹介する。
※問い合わせ先は桐生市役所(代表0277-46-1111)の各課へ。
下水道マンホール蓋の新デザインが決定
市は「市をイメージでき、誰もが親しめて長く愛される」をテーマにした新たな下水道マンホール蓋のデザインを発表した。
昨年9月に一般から公募。応募作品74点の中から、1次審査で5点の候補作品を選定し、インターネットなどによる一般投票で1点を決定した。選ばれたのは、D_kobayashi(県内在住・男性)さんの「白瀧姫伝説」をメインモチーフにした作品=写真。同氏によると、桐生織物のシンボル的建築物「ノコギリ屋根工場」や、平安時代に始まった女性の重ね着の色合わせ「襲色目の美(かさねいろめのび)」の文様をグラフィックで表現し、たくさんの着物が大切にされてきたという思いを込めたという。
全国各地の名物や観光名所などがデザインされたマンホール蓋は「デザインマンホール蓋」とよばれる。世界各地でも見られるが、日本のものは意匠が凝ったものが多く芸術性がいため「足元の芸術」「日本の1つの文化」などと語る人もいる。
市の担当者は「今後、市役所敷地内のほか数カ所にカラーデザインを、車道には黒色のものを順次設置する予定」と話す。問い合わせは下水道課へ。
未来に残したい桐生の景色をインスタに
市は6月30日まで、「#桐生100景」として、未来に残したい桐生の写真を、写真投稿サイト「インスタグラム」で募集中だ=写真はイメージ。投稿された魅力たっぷりの写真は現在、市の公式ホームページで紹介しており、来年の3月31日まで公開する。
投稿は以下の手順で行う。①写真を撮影②市の公式ホームページインスタグラム投稿システム運用方針を確認③キャプション(コメント欄)にハッシュタグ「#桐生100景」と、市公式インスタグラムのメンション「@kiryucity_gunma_kiritori」を付ける。写真のテーマは、桐生の絶景、まちなみ、素敵なお店や商品、おいしい食べ物などジャンルは問わない。市の担当者は「桐生の魅力を市から世界へ、世代を越えてたくさんの人におススメしてください」と話す。問い合わせは、魅力発信課へ。
ふるさとキラキラフェスティバル Final
24日から5月23日にかけて「花と緑のぐんまづくり2021in 桐生~ふるさとキラキラフェスティバル~」を開催。約1カ月の間、市内各所をさまざまな花で飾りイベントを行う。
メイン会場は同市の「新川公園」。サテライト会場を「アースケア桐生が岡遊園地」「未来へはばたけ 山田製作所桐生が岡動物園」「有鄰館」「同市新里支所」「道の駅くろほね・やまびこ」とした。同イベントは「花と緑あふれる県土づくり」を目的に09年から各市町を巡回し行われてきたが、桐生が最終開催地となる。
今回は「市制施行100周年、あしたの緑をいまつくろう」をテーマに記念事業として開催。メイン会場の新川公園には「つむぐ糸」をイメージした大きな花壇を展示。ほかにも、桐生駅から同公園までの沿道には花壇、道の駅くろほね・やまびこには市の花・サルビアの壁面花壇、遊園地には市内園児によるお絵描き花壇が登場するなど、各会場の特色を生かした花壇も見どころだ。体験教室やステージ、クイズラリーなど、様々なイベントも楽しめる。問い合わせは公園緑地課へ。
記念動画で100年のあゆみ振り返る
市は、桐生市制施行100周年記念映像「感性育み 未来織りなす 粋なまち桐生~桐生人こそ宝。~」を制作。動画投稿サイト「ユーチューブ」の桐生市公式チャンネルで公開中だ。
冒頭では荒木恵司桐生市長が登場し=写真、「先人たちが築いた偉大な礎と、今日まで伝統をつむいだ熱き郷土愛を受け継ぎながら、新たな100年を見据えしっかりと歩みを進めてまいります」と決意を語っている。動画は22分。市制施行となった1921年からの100年の歴史の概要を、写真や動画を交えて紹介。産業や文化がどのように発展してきたかを知ることができる。同市公式チャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=-Zf4aRJwWrs)で視聴できる。問い合わせは魅力発信課へ。
新体育館&陸上競技場 新築オープン
桐生市民が長年親んできた市民体育館と陸上競技場が今年、新築オープンした。市民体育館は1969年に建築されたが、老朽化したため約3年かけて建て替え工事を行った。今年1月8日に開館し、愛称「桐生ガススポーツセンター」と名付けられた。メインアリーナ(バレー3面、バスケット2面、バドミントン10面)のほかサブアリーナもある。
一方、新陸上競技場は2019年12月から約2年をかけ工事を行い、先月20日に開場した。陸上競技場の愛称は「森エンジニアリング桐生スタジアム」。全天候型の400mトラックが整備された。問い合わせはスポーツ課へ。
山口晃さんの桐生描いた鳥観図、今夏展示
桐生ゆかりの画家・山口晃さんが、市内の街並みを緻密に描いた鳥観図のような作品「ショッピングモール」の展示を今夏、美喜仁桐生文化会館で行う。
展示は3月の記念式典に合わせて行う予定だったが、コロナの感染拡大防止のため7月に延期となった。桐生のまちをショッピングモールに見立てた同作のほか、過去の山口さんの個展などのポスターも展示予定。問い合わせは生涯学習課へ。
桐生といえばココ!
桐生の魅力を体験できるおすすめの施設や飲食店、イベントを紹介します
子どもからお年寄りまで楽しめる
アースケア桐生が岡遊園地
桐生が岡遊園地は1971(昭和46)年に開園。入園無料で、ミニレール・観覧車など7つの大型遊器具が大人200円、子ども(2歳~中学生)100円、SLなどの4つの小型乗り物が50円と割安で子どもからお年寄りまで楽しめ、家族に人気の遊園地だ。
今年で開園50周年を迎える遊園地は記念事業として「みんなで選ぶ!なつかし写真」と題し、昔撮影した写真を募集(応募受付は終了)し、来園者が投票する。上位3点は同市遊園地ホームページまたは遊園地ホームページのトップ画像に使用予定。展示期間は4月24日~5月9日(初日午前10時30分から、最終日は午後3時まで)。
■桐生市宮本町4-1-1/0277-22-7580/4月13・20・27日は休園、5月は無休/入園無料/午前9時30分~午後5時
動物たちを見ながら散歩を楽しんで
未来へはばたけ 山田製作所桐生が岡動物園
桐生が岡動物園は1953(昭和28)年に開園した県内唯一の公立動物園。キリン、ライオン、フラミンゴなどおよそ80種類の動物たちを飼育している。ライオン舎ではガラス越しに迫力あるライオンの姿を見ることができる。また、昨年12月に誕生したフンボルトペンギンの「シャルル」もすくすく成長中。
同園では市制施行100周年記念事業の一環として、ゾウ舎を解体し、来園者のアンケートで一番人気だったレッサーパンダを迎える予定だ。
園内は自然が豊かで、動物を眺めながらの散策もおススメだ。
■桐生市宮本町3-8-13/0277-22-4442/桐生が岡遊園地に併せて休園、水族館は休館中/入園無料/午前9~午後4時30分
※桐生が岡遊園地、桐生が岡動物園の開園状況や利用上の注意は、園のホームページで事前にご確認ください。
毎週第一土曜日は「骨董市」と「machiya マルシェ」
桐生天満宮(天神町)境内では、1993年から毎月第一土曜日に「古民具骨董市」が開催されている。毎回、日用品や古書、カメラ、陶磁器、絵画など約80店舗が出店する。
天満宮近くでは、手作り品の販売市「machiyaマルシェ」も同日に開催。地元出身のお笑いコンビ・ワンクッションが桐生活性化を目指し、2016年から開催。手作り菓子やハンドメイド雑貨など9店舗が出店する。骨董市、マルシェとも次回は4月3日に開催予定。
【桐生天満宮古民具骨董市】午前7~午後3時/桐生市天神町一丁目-2-1/事務局 TEL090-3319-3764
【machiyaマルシェ】午前9時~午後3時/本町一丁目1-4/事務局 ワンクッション・佐藤さん TEL090-9803-6094
桐生織物の歴史と現在を伝える場所
桐生織物記念館
「桐生は日本の機どころ」と上毛かるたにうたわれる織都桐生。「MADE IN KIRYU」の歴史と現在を伝える桐生織物記念館は、桐生織物同業組合の事務所として1934年に建築。その後、2012年から産業観光施設「桐生織物記念館」として一般公開されている。2階では、桐生織物の歴史や製造工程などを説明。伝統的工芸品「桐生織」の製品や手織り機・織物道具の展示を見られる。1階では、ネクタイやスカーフ、マスクなど製造販売された品物リーズナブルな価格で提供。建物は国登録有形文化財。
■桐生市永楽町6-6/0277-43-7272/午前10時~午後5時/無休(販売場は毎月最終週の土日(10月のみ第3土日)休業)入館無料
乗ってみたい! 低速電動バスMAYU(まゆ)
低炭素型スローモビリティとして全国的に注目を集める車「MAYU」。週末に桐生の観光スポットを最高速度19㎞で走行する。運行は「重伝建コース」「動物園・遊園地コース」の2コース。いずれも昨年3月にオープンした桐生市観光情報センター「シルクル桐生」(群銀桐生支店敷地内)が出発到着地。観光交流課の岩上昌樹さんは、「ゆっくりとしたスピードで桐生の町を眺めることで、新しい魅力が発見できるかもしれません」と話す。新型コロナ感染拡大から乗車可能人数は10人から現在6人に減らしている。原則土日に運行(年末年始を除く)。無料。運行状況確認は、シルクル桐生(0277-32-4555)まで。
春の虫を観察しよう
季節展「虫たちの季節がやってきた!~早春編」昆虫の森で、18日まで
県立ぐんま昆虫の森
県立ぐんま昆虫の森の昆虫観察館では今月18日まで、季節展「虫たちの季節がやってきた!~早春編」を開いている。春に活動する昆虫の生態の理解を深めてもらおうと企画。テントウムシやチョウ、ミツバチの種類や体のつくりなどを標本やパネル約200点展示。顕微鏡でチョウの羽根の鱗粉(りんぷん)やミツバチの複眼などを観察できるコーナーも。企画の担当者は「春ならではの虫たちをぜひ感じてみてください」と呼び掛けている。同季節展の初夏編は22日~6月27日。
■桐生市新里町鶴ヶ谷460-1/0277-74-6441/午前9時半~午後4時(入園は3時半まで)/月曜休園(祝日の場合は翌日)/入園料一般410円、大高生200円、中学生以下無料
ココでひといき!
和素材と季節のジェラートでハッピーに
わびさびや
2005年にオープン、2012年に現在地に移転。店主の高野欽市さんが本場イタリアで学んだ手作りジェラートは、卵は不使用、桐生市の新鮮な牛乳をベースとし、各地から厳選した和素材を使用し、優しい味わいだ。おすすめは桐生産牛乳と沖縄産和三盆糖を使った「桐生の牛乳」、素材のバランスが絶妙な「ヘーゼルナッツほうじ茶」(350円~)。 高野さんは「100年前に曾祖父も桐生でアイスを作っていたと聞き、繋がりを感じる。食べた人がハッピーになれたら」と語る。
■桐生市新宿3-4-49/0277-43-9088/月・火定休(最終週は日・月)午前11~午後5時
※通信販売あり
店自慢のスパイスカレーとコーヒーを味わって
ナロー NArrow
渡良瀬川近くに2020年9月オープン、青いペンギンのポストと緑の屋根が目印だ。
カレーは自家製のスパイスと厳選された素材を使用。「バターチキン」、「グリーンカレー」、「サバカレー」、「今週のカレー」から1種または2種類選ぶ。セットのコーヒーは、市内のノーリーズコーヒーのオリジナルブレンドなどが味わえ、シェフ特製のデザートも人気だ。テイクアウトもOK。カレーは1000円~。 店主の関根龍士さんは「自慢のカレー、コーヒーを是非味わって」と語る。
■桐生市川内町2-41-1/0277-65-8760/木曜定休、不定休あり/午前11~午後6時
https://www.instagram.com/narrow_curry/