私が住んでいる多野郡神流町は群馬県の南西部に位置し、南は埼玉県秩父市、西は上野村を挟んで長野県です。山深いので平地が少なく稲作が難しい地域だったため、養蚕を中心とした農業や林業が人々の生活の糧を得る手段でした。現在は観光による町おこしが盛んとなり、恐竜や鯉のぼりを大きく打ち出し、ゴールデンウィークや夏休みを中心に大変多くのお客さまでにぎわっています。
そんな神流町麻生地区に昨年6月、かつて実際に使われていた築130年の養蚕農家を改装した古民家の宿「川の音(ね)」がオープンしました。養蚕農家の特徴である、室温調節のための高窓や現代でいうベランダの様に張り出した出し梁などは残しつつ、「快適に過ごせる古民家」をコンセプトにしています。
この「川の音」はこれまでの町の観光とは一線を画す存在です。一番の特徴は「神流町での〝生活〟を味わえる」こと。地域の人々が日常の生活を送っている集落のまさにど真ん中にあり、あたりを散歩すれば近所のおじいさんとすれ違い「川の音のお客さんかい?」と声をかけられ、夕食にはそのおじいさんが畑で作った野菜が振舞われたり。住民と同じように川のせせらぎを聞きながら布団に入り、野鳥のさえずりで目を覚ます。
季節を問わず、川の音では神流町のその時期その日の生活を贅沢に味わうことができます。人とのふれあい、景色、音や匂い。それらは神流町がどんな町なのか、あなたに教えてくれるはずです。神流町に足を運ばれたことがない方も多いと思いますが、ぜひ一度川の音にお越しになってください。