「『地域とのコラボ』というスパイスを利かせつつ、伝統芸能もきちんと見せることが大切。 バランス良く柔軟にやっていきたいですね」
「力を合わせて群馬の魅力を発信しよう」と昨秋、群馬出身の若手落語家たちがユニット「上州事変」を立ち上げた。メンバーは二つ目の林家つる子さん、立川がじらさん、柳家小もんさん、前座の三遊亭ぐんまさんの4人。昨年の群馬県民の日の旗揚げ公演を皮切りに、全35市町村での開催を目指す。今月30日、3回目となる落語会「みどり日和」を開く上州事変のリーダー・林家つる子さんに、ユニット活動や落語、地元・群馬への思いを聞いた。
【群馬の魅力を伝えたい】
Q結成の経緯を教えて下さい
発端は昨春。学生時代から親交のあったがじら君と県内の千手院さんで高座をした時、「群馬出身の仲間と一緒に地元で何か出来たら良いよね」と盛り上がりました。そこで二つ目の小もん君と前座のぐんま君に声をかけたところ、「地元を盛り上げたい!」と意気投合。4人ともフットワークが軽く、女性1人に男性3人というバランスも面白いとなって新ユニットが誕生しました。インパクトがあったようで、想像以上の反響がありました。
Qユニットのコンセプトは
「群馬の魅力、落語の魅力を発信」を合言葉に、県内全35市町村を巡り最後、東京銀座の『ぐんまちゃん家(ち)』での千秋楽を目指して活動しています。4人とも県内の様々なイベントに出演していますが、行く先々で「群馬はアピール下手」という話を聞いていました。お世話になっている地元の皆さんの力になりたい、群馬の魅力を伝えたい、という思いで活動しています。自分たちも行ったことのない市町村に行けるし、寄席を見る機会の少ない地域で落語もできる、まさに一石二鳥です。
Qユニット名の由来は
「上州で、この4人が新ユニットを立ち上げるなんて事件だ!」というつる子の発言から、がじら君が「上州事変」というワードを思い付きました。紅一点というメンバー構成に加え、4人ともロックバンド「東京事変」のファンだったため決めました。旗揚げ公演のタイトル「群馬日和~誰か此処(ここ)へ来て~」も東京事変へのオマージュが込められています。
Qメンバーについて教えて下さい
芸歴が一番上ということと、「かかあ天下」の県ということからリーダーは紅一点の私が務めることになりました。がじら君は立川志らく師匠の弟子だけあって、愛すべき毒舌キャラ。突拍子もないことを言って周りをザワつかせています(笑)。一方の小もん君は本寸法の落語同様、安定感抜群。真面目だけどお茶目な面もあり、うまく場を収めてくれますね。そして、芸歴が一番浅く年齢は一番上のぐんま君は元気溌剌というかムードメーカー的存在。落語は上下社会ですが、ぐんま君は意見をきちんと言ってくれるので助かっていますね。
【四者四様の芸を一堂に】
Qどのくらいの頻度で公演を行っていますか
「群馬愛」を掲げて昨年、群馬県民の日である10月28日に前橋で旗揚げ公演を行いました。初公演では群馬ネタを取り入れた新作落語のほか、がじらさんが脚本を担当したコントなど「群馬あるある」を盛り込んだ内容で構成し、今年3月に行った榛東公演では榛東のマスコットキャラクターしんとうちゃんに登場してもらったり、群馬ネタ大喜利を楽しんでもらいました。お陰さまで群馬プレデスティネーションキャンペーンイベントやスズラン落語会など単発の依頼も増えてきています。発足以来、10公演程度していますが市町村公演は事前準備が必要なので2~3カ月に1回ペースがちょうど良いかなと感じています。
Q活動する上で大切にしていることは
落語を通して土地土地の魅力を伝えたいと思っていますので、事前に訪れ市長さんや観光協会の方など地域の皆さまから様々な情報を教えてもらっています。そこで得られた群馬ネタを各自が落語に落とし込んで披露するという流れですが、一方で落語そのものの楽しさや奥深さを伝えることも忘れてはいけません。「地域とのコラボ」というスパイスを利かせつつ、伝統芸能もきちんと見せることが大切。バランス良く柔軟にやっていきたいですね。
Q上州事変の強みは
四者四様の芸を一度に見せることができるし、思いがけない化学反応も起こります。1人でやっていると独りよがりになりがちですが、ユニットの場合、他のメンバーから刺激を受けますし切磋琢磨しながら成長できるところも良いですね。毎回、単体では出せないチームの力を感じています。
さらに、一人ひとりが独自の交流関係を持っているため、一緒にやることで繋がりやご縁が一気に増えるというメリットもあります。個人とユニット、双方とも活動の場が広がっていくのでありがたいですね。
【常に新しいことに挑戦】
Q上州事変公式HPで群馬の名所名物などを発信しています
写真や動画は4人全員が載せています。私は食やグルメ、がじら君は文学や文化、小もん君はオールマイティーだけど特に歴史に強い。そして、ぐんま君は珍スポットや流行りものを見つけるのが上手。群馬の魅力を切り取る視点や興味関心が皆違うので、見た方に楽しんでもらえると思います。
Q活動の原動力は
メンバーは二つ目、前座という立場で、それぞれがチャレンジをしていかなければいけません。個々の道のりを力強く進むための一つが上州事変の活動。ですから、ユニット公演ではコントを披露したり地元のゆるキャラと共演するなど毎回、新しいことに挑戦しています。30日のみどり市公演では、地元出身の群馬県住みます芸人アンカンミンカンさんと来月デビューする地元の新ゆるキャラ・みどモス君をゲストに呼びます。地域に愛されている人やモノとコラボすることで、自分たちの芸の幅も広がっていくでしょう。落語の常識にとらわれず、群馬や伝統芸能の良さを伝えていきたいですね。
Qみどり市公演の見どころは
とにかく会場のながめ余興場が素晴らしいので、この機会に見て欲しいですね。古き良き昭和の雰囲気が漂う芝居小屋で、落語と漫才を披露しますので寄席らしい公演になるでしょう。ながめ余興場ならではの演出に加え、諸事情から一時的に二つ目から前座に降格したがじら君も見られますので貴重ですよ(笑)。
Q群馬のファンにメッセージを
ユニット名を聞いて、「あのロックバンドのパロディか!?」と思う人もいるでしょう。常に進化し続ける東京事変のように、落語を通して新しい風を起こすべく4人一丸となって活動に取り組んでいます。目指しているのは、普通の落語会ではなく、でもお子さんから高齢者まで幅広い世代に響くような「ソフトで尖った感」のある公演。落語ファンはもちろん、そうでない方も楽しんでもらえる内容になっていますので是非、一度、上州事変公演にお越し下さい。メンバー一同、お待ちしております。
文・撮影 中島美江子