聖火と「もやもや」 [東京五輪の聖火リレーが3月30、31の両日…]

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東京五輪の聖火リレーが3月30、31の両日、群馬県内を走り抜けました。聖火をつないだランナーは2日間で173人。車いすのラガーマン先生、亡き息子と駆けた「放課後デイサービス」を運営する女性……。173通りの思いがこもる力走と笑顔を満開の桜が祝福していました。

観客どうしが「密」になりがちな沿道や広場もあったけれど、県実行委員会をはじめ県警や各市町村、そのほか大勢の関係者のみなさんのご尽力で15市町村を巡った聖火は、無事に長野→岐阜→愛知→三重→……と引き継がれました。

世論調査では五輪の中止や再延期を求める声がなお多く、公益財団法人「新聞通信調査会」が日本と関係の深い5カ国(米仏中韓タイ)の各1千人を対象に実施した聞き取り調査でも「中止・延期すべきだ」が7割超に。一体いつになったら誰もがワクチン接種を受けられるのかも見通せない中、「復興五輪」「人類がコロナに打ち勝った証し」と言われても、もやもやの晴れない人が多いのでしょう。海外客の受け入れ断念も決まりました。そもそも東日本大震災の被災地の復興も、コロナ禍との闘いも終わっていません。

聖火は今日も、さまざまな思いをつないで日本のどこかを走ります。「もう走り出しちゃったから」と思考停止して追認するのではなく、あきらめや無関心でもなく、一人ひとりが「今やるべきこと」を考え、いろんな思いを受け止め、議論し、行動することが大事だなと思います。

(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

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