芸人が起こした奇跡の話(最終回)

芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。

自分の起こした奇跡が信じられず一点を見つめる、もりあきのりさん

約4年間続いたこの連載も今回が最終回。長らくのご愛顧ありがとうございました。元々は地元高崎市で私の主演映画が上映された事がきっかけで始まったこの連載。第1回の原稿では、高校時代の同級生たちが手作りで開催してくれた上映会の様子がつづられています。その後、この連載がきっかけで同じく地元ラジオ高崎でのレギュラー番組も決定。その番組にゲスト出演して頂いた加藤登紀子さんの貴重なお話も、こちらのコラムに書かせて頂きました。

ほかにも同期の芸人・爆笑問題のTV画面では見せない素の顔や、落語界でご一緒した三遊亭小遊三師匠の意外な趣味の話。去年からの新型コロナの流行後は、自粛生活の楽しみ方や昭和映画の見どころなど様々な出来事を心置きなくお伝えしてきました。こんな素敵な場所を与えて頂き、人のつながりに感謝ひとしおです。

なかでも連載開始後に所属する事になった漫才協会の師匠方を紹介できたのは良い思い出。漫才協会会長である青空球児師匠の舞台上と素顔のギャップ、夫婦漫才師「新山ひでや・やすこ」師匠との思い出話。そしてなんといっても「世界一仲が悪い漫才師」としてギネスに認定されそうな勢いの「おぼんこぼん」師匠の話。日々めまぐるしく変わる空模様のように、今でも会うたびに仲が良くなったり悪くなったりを繰り返しております。そんな素敵なメンバーたちの姿を、皆さんにお伝えする場がなくなるのは寂しい限り。

先日も漫才協会の公演が行われる浅草東洋館の楽屋で、こんな出来事がありました。楽屋で出番前の準備をしていると「もりあきのり」さんというピン芸人の方が自分の出番を終えて帰って来ました。この方年齢は50過ぎ、漫才協会に入って20年近いのですが、誰も彼の素性を良く知らない。一説によると元々はデパートの紳士服売り場で働いていたのですが、50着発注するところを間違えて500着発注してしまいクビになった。という伝説を持つ芸人です。もう4年くらい彼の舞台を見ていますが、一度もウケたところを見たことがない。常にオロオロしている姿しか見たことがない。そんな彼が私の目の前でいつも以上にオロオロしながら「大変な事をしてしまいました…」顔面蒼白です。訳を聞くと「今日はお客さんが少なくて7人しかいなかったのですが、その7人を全員寝かせてしまいました…」客席全員を寝かせるという奇跡。催眠術師ならば天才的な能力ですが、彼は漫談家。ガックリと肩を落としながら一点を見つめていました…。

そんな不思議な芸人たちの話、今後はブログやツイッター、ラジオ高崎の「アンドレディオ」などでもお伝えしていきますので、そちらでお会いしましょう! 今までありがとう朝日ぐんま!スナフキンは旅立ちます!

金谷ヒデユキ

金谷ヒデユキ/安中市出身。フジテレビ「タモリのボキャブラ天国」にて「地獄のスナフキン」の愛称で親しまれた音楽芸人。現在は音楽活動、芸人活動その他、声優として「機関車トーマス」、アニメ「けいおん」等にも出演。ツイッターのフォロワー募集中( https://twitter.com/kanaya_hideyuki )
ブログ: https://ameblo.jp/kanayahideyuki/

掲載内容のコピーはできません。