落語の話(Vol.4)

3年前の異業種落語会。左から、自称落語界の妻夫木「柳亭市弥」、東洋一の丸顔声優「真田アサミ」、そして私「金谷ヒデユキ」=東京・高円寺HACO

芸人、ミュージシャン、俳優、声優など幅広く活躍する金谷ヒデユキさんが、芸人目線で世間を斬ります。不定期連載。

わたくし金谷ヒデユキ、今現在、音楽芸人ならびに声優を本職としておりますが、最近落語をやらせて頂く機会が増えてまいりました。きちんと弟子入りをした訳でもない素人が落語をやるなんて、ちょっと前なら考えられない話で、ホントありがたい限りです。

「人前で落語をやる」昔から憧れはあったものの、正式な修行もせずに軽々しくやるのは本職に対して申し訳ない、失礼だ、という気持ちがずーっとあったんですよ。こんな私でも。

そんな自分で作り上げたハードル、手作りの障害物を取り除いてくれたのが、本職の落語家の方々との出会いでした。今回はそんなお話です。

最初に落語を人前でやったのは3年前。東京の高円寺で行なわれた「異業種落語会」でした。出演メンバーは声優の真田アサミちゃん。わたくし金谷ヒデユキ。そして本職の落語家・柳亭市弥くん。演劇の舞台で共演した異業種3人が落語をやる、という企画でした。慣れない演劇の舞台に初挑戦した市弥くんに敬意を表して、我々も慣れない落語に挑戦しよう。という主旨で。演劇の舞台では居心地悪そうにしていた市弥くん、そこは本職の落語家、打って変わった落ち着きぶり。片や落語素人のわたくし、演目さえ中々決められず、直前になって桂枝雀師匠の「代書屋」をやると決めたものの、上方落語を勝手にやっていいものかどうかさえ分からず途方に暮れておりました。

そんな気持ちのまま、別の仕事で大阪へ。ライブハウスで歌を歌っていたのですが、その時偶然にも客席で見ていたのが桂枝雀師匠のお弟子さんの桂九雀師匠。全然面識なかったのに、「コイツおもろい奴っちゃー!」と、すぐに落語会のゲストに呼んで頂きました。いわばスカウトですよ。落語界のジャニー喜多川さんですよ。「ユー、ウチの落語会来ちゃいなよ!」ですよ。その時に「今度はじめて落語をやる事になりまして…」という話をしたところ、「着物持ってはりますの?持ってへん?ほな私のん送りますわ」

え?いいの?って思ってたら、我が家に着物がどーん!扇子もどーん!手ぬぐいもどーん! 落語セット一式が本当に届いたのです。え?何?このおもてなし。もしかして俺、抱かれちゃうの?これが落語界のしきたり?などという不安も杞憂に終わり、それからも度々お世話になっております。日本一めぐまれた素人落語家の高座、お暇があれば是非一度!

金谷ヒデユキ

金谷ヒデユキ

安中市出身。フジTV「タモリのボキャブラ天国」にて「地獄のスナフキン」の愛称で親しまれた音楽芸人。現在は音楽活動、芸人活動の他、声優として「機関車トーマス」アニメ「けいおん」等にも出演。初の主演映画「道しるべ」9月27日よりDVD発売開始。

掲載内容のコピーはできません。