観客席の巨大アーチ  12年ぶりに復活

国重要有形民俗文化財 

上三原田の歌舞伎舞台

「弐百年祭」へ向け住民らが力を結集させ建造中の観客席。奥のかやぶき屋根の建物が歌舞伎舞台

国指定重要有形民俗文化財「上三原田の歌舞伎舞台」(渋川市赤城町)が今年創建200年を迎えるのを記念し11月2、3日、「弐百年祭」が開かれる。先月、地元の保存会「上三原田歌舞伎舞台操作伝承委員会」は、地域の文化向上と活性化に貢献した個人や団体に贈られる「サントリー地域文化賞」を受賞。節目の年に、その存在や活動が大きな脚光を浴びている。現在、記念公演へ向け1000人収容できる壮大な観客席の制作中。明後日15日には、設営風景を一般公開。完成形に近づきつつある会場の設営状況と住民らの技術の妙を披露し、「地域の宝」を広くアピールしたい考えだ。(上原道子)

 

最大規模の「跳ね木」7本

全国でも類を見ないという特殊な舞台演出の機構を持つ上三原田歌舞伎舞台は、国道353号に面した高台に建つ。大きな公演のたびに観覧席「小屋がけ」を制作、終了後に取り壊すのが古くからの慣例だ。地元の自治会員25人が今年5月末から毎週末に作業を行う。資材の切り出しから骨組み、装飾まで全て手作業。今月初めには「跳ね木」を7組渡した巨大なアーチ屋根の骨格が完成した。跳ね木は、約20㍍の根付きの杉を両端から延ばし、支柱で支えた中央部を1本に結んで作る。奥行約25㍍、幅20㍍、高さ5㍍と、跳ね木7本の大規模客席の復活は2001年、07年に続き12年ぶりという。

弐百年祭では、市内外10団体が歌舞伎や人形芝居、現代劇、講演など多彩なプログラムを上演。優先観覧席券が返礼されるふるさと納税も受付中だ。

 

一般公開で技術の妙PR

一段高い桟敷席の竹垣を造る住民たち

作業に携わる伝承委のメンバーは20~70代。平日は会社勤めが多いため作業は土日のみ。力仕事のため全て男衆だ。大工、土木業、とび職など地元で腕を鳴らす専門家も数人いるが、ほとんどが未経験者。そこで、昨年6月から小屋がけの工程や縄の結び方など特殊な技術を学ぶ勉強会を定期的に開いてきた。長岡米治委員長は(77)は「伝統を継承する上で、高齢化と人手不足が課題。特徴のある作業や技術は体で覚えてもらって、将来、後輩に指導できる人を育てていきたい」と意気込む。

今月15日には、同委員が解説を交えながら作業風景を一般公開。伝統技術の妙を広くアピールする。同委員会の都橋俊明事務局長(69)は、「設営は順調で佳境に入ってきました。各メンバーの得意分野を生かし作業に当たっています。一人ひとりが生き生きと良い顔で仕事をしている様子を、間近で見て感じてほしいですね」と呼びかける。

公開は午前10時、午後2時の2回、参加無料。駐車場は旧三原田幼稚園。

掲載内容のコピーはできません。