青春時代を過ごした母校は神奈川県鎌倉市の西、相模湾を一望する小高い山の上にあります。アニメ「ＳＬＡＭ ＤＵＮＫ（スラムダンク）」のモデルになり、周辺は海外からもファンが「巡礼」に訪れる「聖地」になっています。
海岸沿いの小さな最寄り駅から校舎へと続く坂の名は「日坂（にっさか）」。郷土史に詳しい先生方によれば、１３３３年に上州で挙兵した新田義貞が七里ガ浜へと攻め下ったことから、「新田坂」と呼ばれたのが由来だとか。「よろい武者を見た」「増改築のたびに『たたり』がある」。母校は激戦となった北条方の出城跡といい、そんなうわさも絶えませんでした。
義貞が太刀を投じたと伝わる稲村ガ崎の古戦場まで、往復約５㌔の砂浜を走り込むのが部活動の日課。練習を終えると、教科書やノートを教室のロッカーに残したまま、通学バッグにしのばせた文庫版の新田次郎の小説『新田義貞』（上下巻）をむさぼり読みました。各章末尾にまとめられた取材後記には、群馬のエピソードもふんだんに描かれています。はるか上州から天下を争った名将たちの軌跡に思いをはせて、はや30年余――
そんなあこがれの地に１日付で赴任しました。どんな出会いが待っているのか、ワクワク、ドキドキです。コロナ禍であらゆる光景が一変しましたが、読者のみなさまとともに前を向き、歩んでまいります。どうぞよろしくお願いします。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)