食中毒に学ぶ[9月22日号]

胸を痛めた方も多いはずです。前橋市内の総菜店で買った炒め物を食べた3歳の女の子が9月に亡くなりました。同じ店や系列店の総菜を食べた人たちが群馬のほか埼玉でも発症し、一時重体になった子もいました。

原因菌はO157。毒素を出す病原性大腸菌の一つで、もとは牛の腸などにいます。日本でこの名が大々的に報じられたのは、1996年。大阪府堺市の小学生や家族、教職員ら9千人以上が発症し、児童3人が亡くなりました。

原因は学校給食でした。自校調理なのに47校で同時期に発生したことから、仕入れた食材が汚染されていたと推定されました。国がのりだし調べましたが、今も確かな感染経路は分かりません。

さらに痛ましいのは、この時発症して腎臓を悪くした元児童が2015年に後遺症で亡くなったことです。25歳。意識不明の女性を夫が見つけたといいます。

発生当時、大阪の社会部記者だった私は、堺市に通って取材しました。それから約20年、病を治療しながら、他の元児童も心の傷を抱えながら、人生を重ねていたことに、想像が及んでいなかった自らを恥ずかしく思います。

その後も肉だけでなく、漬物、キュウリ、冷凍メンチカツなど様々な食材・食品を介した感染は続きました。昨年だけでも病原性大腸菌による国内の犠牲者は10人に及びます。大規模な発生の度に少しずつ、国や自治体による規制は強まります。けれど同時に消費者である私たちが、もっと主体的に学び取り組めることがあるはずです。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)

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