貼り絵作家 ちぎらまりこさん

オオカミやシカなど制作中の貼り絵を広げる(前橋のyadorigi)

手を使った仕事が好き 依頼されたものをコツコツと作る「職人」のような存在でいたい」

前橋のまちなかを流れる広瀬川に近い弁天通りに佇むアンティークショップ「yadorigi」で、片品村出身、前橋在住の貼り絵作家ちぎらまりこさん(32)が、様々な和紙や包装紙を切ったりちぎったりして作品を制作している。色も質感も様々な紙を重ね、奥深い色味を創り出す。パーツを並べるうちに、人物や自然、動物などのモチーフが生き生きと動き出しそうな貼り絵作品が完成する。キャリアウーマンから転身し、今では人気の貼り絵作家として活躍するちぎらさんに、貼り絵との出会いや今後を聞いた。

野生の動物を貼り絵に

-現在、どのような作品を作っているのですか

今月9~24日に長野県安曇野市の詩とデザインのアトリエ「SHITEKI NA SHIGOTO Gallery」で行われる個展に向けて、オオカミやシカの貼り絵を制作しています。
-動物をモチーフにすることが多いのですか

いつもは個人のお客さんや企業さんに頼まれたものを貼り絵で作ることが多いのですが、布と紙をつなげて組み合わせたものが面白いなと取り組んでいます。片品村の実家に帰った時、シカなど遭遇することもあります。それはとても怖いのですが、野生だからこその魅力や人にこびない強い存在が好きです。
-貼り絵に使う素材は

素材は和紙や手すきの紙、色の焼けた昔の雑誌、インクの染みた新聞、包装紙、段ボールなど、そこら辺にあるものはなんでも。お客さんが多様な紙をミカン箱に詰めて、「これ、使いますか?」と持ってきてくれることもあります。オオカミの顔は和紙で作ってあります。毛の質感が、和紙をちぎると出るケバで表現できるんです。あとは普通のハサミと液体やスティックのりなど、どこにでもあるものです。

手を使い身の丈にあった仕事がしたい

-昔から貼り絵やアートが好きだったのですか
小さい頃から絵を描くというより、ハサミを使って広告をチョキチョキと切り抜いてマンガを作ったりしていました。お見せできないようなものですが(笑)。もう亡くなってしまいましたが、暇さえあればずっと手を動かしていた祖父の影響が多大でした。舞茸農家を始めた祖父は、端材や身近にある枝で必要な身の回りの道具はもちろん小屋まで作っちゃう。そばで見ていて、憧れの人でした。「人の手を介したモノって、温かくていいな」と気付かせてくれました。

-貼り絵との出合いは
2013年に貼り絵を始めたので、今年で7年目です。大学卒業後、複合機やソフトウェア会社に勤めていました。その時から、休みには友人や知り合いのお店のチラシやカードを遊び感覚で作らせてもらっていました。ところが、11年の大震災で計画停電があり、仕事がら電気がないと何もできなくなってしまったのがショックで。その時から、もっと自分の手を使い、何か身の丈の範囲でできる仕事がしたくなりました。以前から興味があった「自営業になるなら今だな」と会社に「辞めます」ときっぱり言いました。その後、いくつかの仕事を掛け持ちしながら、数年前にやっと貼り絵作家として独立しました。

17年に台湾台中市で「似顔絵ワークショップ」を行っているちぎらさん

-仕事に転機があったとか
2年前、初めて台湾台中市で個展をしましたが、その時、転機が訪れました。現地の人とコミュニケーションを取りながら、貼り絵の「似顔絵ワークショップ」に挑んだのが楽しくて楽しくて。制作時間は1作品約20分でしたが、今になって見ると少しラフな作品でしたね。以前から私の存在をネットなどで知っている人、日本に興味を持ってくれる人も多数来てくれて、びっくりしました。出来上がった時のお客さんの反応がまたうれしくて、「最高の誕生日プレゼントです」「亡くなった犬と一緒の絵になってありがとう」など反響が大きかったです。似顔絵の原画を喜んでくれた人や貼り絵に自らの思いを託してくれた台湾の人に、逆に励まされました。帰国してからは、日本各地でワークショップを開催しました。それと共に、貼り絵の仕事比率も高まり、徐々に貼り絵が仕事として成り立つようになりました。

-今後やりたいことはありますか?
絵を通して様々な人に会いたいので、他地域や国に行ってみたいですね。九州や関西。台湾もまた行きたいし、アジア以外も。民族衣装も魅力的だし、アフリカなど肌や髪の色が違う国も良いですね。行った先で出会った素材や紙を使用して貼り絵を作ってみたいです。身の回りにあるもので、等身大の仕事をする貼り絵職人として、暮らしの中に溶け込む作品を目指していきたいです。

(文・写真 谷 桂)

ちぎらまりこ/87年3月生まれ、片品村出身。群馬県立女子大学文学部卒。13年より、前橋を拠点に、貼り絵作家として活動展開。前橋駅改札前の壁画作品を制作。台湾での個展開催や、個人オーダーのほか企業や店舗のイラストを手掛ける。前橋在住。chigiramariko.com

■information
11月9~24日、長野県安曇野市の詩とデザインのアトリエ「SHITEKI NA SHIGOTO Gallery」(長野県安曇野市穂高有明)で、ちぎらまりこ個展「やわらかく、まるくなる」を開催。10、22、23日午前11~午後6時には、貼り絵の似顔絵オーダー会も。1人3500円~。
https://shitekinashigoto.com

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