群馬の玄関口、高崎駅東口からまっすぐ東へ400メートル程進むと、右手に全面ガラス張りの建物が見えてくる。来月20日にオープンする「高崎芸術劇場」だ。開館日は、世界的ソリストと群馬交響楽団、高崎第九合唱団が「歓喜の歌」で幕開けを祝う。こけら落とし以外にも既に多くの公演が発表され、国内外から大きな注目と期待を集めている。「音楽のある街・高崎」に誕生する「音楽と舞台芸術の殿堂」について、2週にわたり紹介する。 (中島美江子)
新しい価値と感動を高崎から世界へ発信
日本の地方オーケストラの草分け的存在である群響の本拠地を有する高崎市。1961年に建設された群馬音楽センターは群響定期を始め、数々の著名アーティスト公演や市民の音楽活動を支えてきた。高崎芸術劇場は、その歴史と精神を継承し進化させると共に文化都市・高崎市ならではの新たな価値と感動を創造し発信していくという大きなコンセプトと使命を掲げている。
高崎芸術劇場(以下劇場)は、高崎市が約260億円の建設工事費をかけ2016年夏から駅前の約1万平方メートルの敷地に整備を進めてきた。地上8階、地下1階。国内最大級の舞台面と最新鋭の機能を誇る「大劇場」(2030席)、スタンディングイベントなど多様なパフォーマンスに対応できる可動式舞台と座席を完備した「スタジオシアター」(最大1千人収容)、県内初の本格的な音響を備える「音楽ホール」(415席)の3つの主要ホールなどで構成されている。クラシックに限らず、ミュージカルやロック、ジャズ、バレエ、演劇、舞踊、能など、あらゆるジャンルの公演が可能だ。
栗梅色(赤茶色)を基調とした大劇場は重厚で優雅な佇まい。木の温もりに満ちた音楽ホールは格調高く、モノトーンで統一されたスタジオシアターは洗練されていてスタイリッシュ。それぞれの機能と個性が際立つような設計と意匠が凝らされており、まさに三者三様だ。3つのホールのほかにも、リハーサルやレッスン、創作活動のための9つのスタジオ群、カフェ、レストラン、ショップなどを有しており、「鑑賞の場」「創造の場」「交流の場」が一体化した多目的文化芸術施設となっている。
新しい劇場に対する市民の関心も高い。市は開館記念演奏会に無料招待する市民1000人を公募したところ、7月末の締め切りまでに約1万7千人が応募。予想を上回る反響を受け、市は追加公演を企画し、さらに約1800人を招待するという。また、チケットを先行購入できる年会費無料の「高崎芸術劇場メンバーズ」も7月末現在で8008人が登録。興味や期待の高さが如実に数字として表われた格好だ。劇場の串田千明事業課長は、「オープニング公演以降も、『殿堂』らしい公演チケットを続々と発売しますので、開館までにメンバーズは1万人を突破すると思っています」と自信をのぞかせる。