コロナ禍でも伝わってくる撮影を楽しむ心
コロナ禍を受け、昨年12月、朝日新聞東京本社（東京都中央区築地）、ネッツトヨタ高崎本社、朝日ぐんまの３会場に分散して行われた「朝日フォトコン２０２０」の最終審査。審査員らはフェイスシールドやマスクを着用し、毎月の入選作品１年間分に当たる２２０点の審査を行った。
朝日新聞東京本社では特別審査員らが会議室の机いっぱいに並べられた入選作一点一点を、真剣な眼差しで吟味していく。「不自由な状況下でも楽しんで撮影している様子が伝わってきますね」「写真に対する愛が感じられます」「観ていて惹きつけられる作品が多い」 入選作品に対する感想が次々飛び出し、選考作業は和やかに進んでいった。
各会場とも長時間にわたる厳正な選考の結果、「朝日フォトコン２０２０」の各賞が決定した。大賞など上位６賞の講評を紹介する。
大 賞 朝日新聞社賞
「名残りの雪」小室 英子 さん みなかみ町
幸福なひと時捉えた訴求力の強い作品
朝日新聞東京本社映像報道部長 大野 明
【選評】 何よりも、女の子の自然な笑顔が良いですよね。３月初旬に撮影したようですが、舞い降りる雪の煌めきも幻想的でドラマチック。女の子の洋服の水玉模様も、まるで雪が降ってくるのを待っていたかのよう。見返り美人ではありませんが、正面でなく振り返った瞬間の満面の笑みを捉えているところも心惹かれます。この子の表情から分かるように、幸福なひと時を見事に切り取った、物凄く訴求力の強い１枚に仕上がっていますね。
作者とモデル 距離の近さに心ホッコリ
東京写真記者協会事務局長 渡辺 幹夫
【選評】 撮影者とモデルとの距離の近さが感じられ、心がホッコリします。実は、雪を撮るのは難しいのですが非常に奇麗に撮影されているし、背景も暗い場所をしっかり選んでいます。構成力も良いですね。こうしたらもっと良かったのにというところもありますが、この女の子の笑顔だけで大賞になる価値があると思います。作者が撮影時に感じている気持ちがダイレクトに伝わってきて、観ている人を幸せにしてくれる作品です。
ネッツトヨタ高崎 社長賞
「現場に落雷」竹内 昇さん 高崎市
勇気で捉えた稲妻
ネッツトヨタ高崎 専務取締役 神尾 岳志
【選評】 エピソード欄に命がけの撮影とありました。雷鳴がとどろく中で雷が落ちるのを待っておられたのでしょう。三脚でカメラを固定しての撮影と思いますが、稲光と轟音の中でシャッターチャンスを待つのは、かなり勇気が必要だったのでは。光ってからの対応では間に合いませんし、雷の落ちる場所もわかりません。予測しながらの撮影で運にも恵まれたのでしょう。不気味な雲が渦巻く空を貫いた稲妻を見事にとらえました。無機質な重機が横たわる中で、目に入る立入禁止の札は、重機が稼働する際の注意書きのようですが、この文字もアクセントになり緊迫感を出しています。昨年10月、弊社のイメージカラーがブルーから赤に変わりましたが、その変化を象徴するようで共感も覚えます。どうぞ危険のないよう気を付けて撮影なさってください。
福田健太郎 賞
「夕暮れ」竹本 ひろ子 さん 高崎市
千載一遇のチャンス生かした良作
特別審査員 写真家 福田 健太郎
【選評】 燃えるような日本海の夕景に人物のシルエットを入れ、風景作品でなくスナップ作品として応募。濡れた砂浜に空が映り、写り込んだ光もいい。さらに視線が子どもの目の高さで、優しさとストーリーを感じます。未来を想いずっと眺めていたい作品。ロケ場所の選定や時間帯、季節のことを考えると、すぐに撮れるような写真ではありません。様々な制約を乗り越えて千載一遇のチャンスを迎え、こんなにいい写真を撮れるのはうらやましい限りです。夕景のプリントは難しいものですが、階調もきれいに残り仕上がりも優れています。
若子jet 賞
「無邪気な巫女さん」荻原 伸一 さん 伊勢崎市
静に動を加えた楽しい作品
特別審査員 写真家 若子 ｊｅｔ
【選評】 巫女といえばもう少し大人で静かな印象ですが、ここでは小さな巫女さんが鈴を鳴らしています。女の子らしい二人のしぐさとロープのゆがみが静の中に動きを感じさせ、足元のスニーカーも可愛らしく、見る側もほっこりする楽しい作品です。こういった作品では雰囲気作りが大切ですが、女の子らしい素の表情を活写し、奇麗にまとめています。画面構成がわかりやすく、全体にうまく光が回って流れ方もふわっとしている。スナップのかなり上手な方だと思います。意外性や偶然性が加わればさらに素晴らしい作品になりますね。
小原 玲 賞
「二十歳最初の注目」新井 健次 さん 高崎市
微笑ましさと幸せ感の強さが魅力
特別審査員 写真家 小原 玲
【選評】 成人式を迎えた女性の晴れやかな笑顔と、それを撮影しようとするアマチュアカメラマンたちの奮闘ぶりが実に微笑ましいですね。シャッターを押す時、きっちりと見切れている時とそうでない時があるのですが、実はコントロールしきれないところに写真の面白さがあって、この一枚はそこをうまく切り取っているなと思います。ポジションとアングルが絶妙。手前にある２つの黄色い花も差し色になっていて、お目出たい雰囲気が伝わってきます。人生の節目をたくさんの方に祝ってもらう喜びに包まれていて、観ているこちらまで幸せな気分になりますね。微笑ましさと幸せ感の強さが、この写真の最大の魅力でしょう。
朝日新聞社 前橋総局長 賞
「もうすぐお姉ちゃん」並木 睦子 さん 前橋市
２人の表情に心和む素晴らしい作品
朝日新聞社前橋総局長 本田 直人
【選評】 目を引くのは、もうすぐお姉ちゃんになる幼い子どもの表情です。大きなお腹に手を当てて、鼓動を感じながらも、「お姉ちゃんになるって、どんなことかな」と思っているのでしょうか。不安な思いとうれしさとが絡み合っているようですね。一方で、子どもを見守っているお母さんが、「大丈夫だよ。お姉ちゃんになろうね」と愛情たっぷりに優しく声をかけているように見えます。子どものぷっくらした手の感じや、アンダー気味の露出もとてもいいですね。会話が聞こえてくるような優しい作品です。心を許した作者との関係があってこそ撮影できた一枚になりました。
入賞発表に寄せて
ネッツトヨタ高崎 代表取締役社長 横田 衛
「朝日フォトコン２０２０」にご応募を頂き、ありがとうございました。スタートから23年目の今年度は、コロナ禍で外出自粛などの制限があるなか、皆さまの創意工夫のお陰で前年度を大きく上回るたくさんの作品を拝見させていただきました。読者の皆さまからも、作品発表を楽しみになさる声が多数寄せられ大変うれしく思います。
お祭りやイベントの少ない年でしたが、自然の美しさとじっくり向き合ったり、家族や庭先など身近なものに工夫を凝らしたものが目立ちました。行動力やアイデアの光るもの、誰もが笑顔になるユーモアたっぷりのものもありました。その一点一点から、込められた努力と思いが伝わります。
ネッツ高崎では、昨年５月から全てのトヨタ車をお求めいただけるようになりました。お好みや生活スタイルに合わせ、豊富なラインナップからお選びいただけます。どうぞお気軽にネッツ高崎のお店におでかけください。何でもご相談いただける身近な存在になれるよう、スタッフ一同努力を続けております。今後ともネッツトヨタ高崎と朝日フォトコンを宜しくお願い致します。
新井豊さん（77）11点で年間最多入選賞受賞
「朝日フォトコン２０２０」年間最多入選賞は、11点が入選した新井豊さん（77＝前橋市）に決まった。新井さんは、今回「小さな旅立ち」で朝日新聞群馬県朝日会会長賞を同時受賞。２位以下は、８点入賞の田島正義さん（71＝伊勢崎市）、７点入賞の小坂明さん（65＝前橋市）、６点入賞の綾部すがさん（78＝桐生市）、荻原伸一さん（70＝伊勢崎市）、５点入賞の石田卓治さん（74＝太田市）、魚津隆範さん（65＝藤岡市）、狩野房雄さん（70＝前橋市）、しめぎ光男さん（67＝みなかみ町）、神保忠雄さん（63＝高崎市）、舘野邦子さん（68＝藤岡市）、千葉直江さん（64＝邑楽町）、巻島芳明さん（64＝太田市）と続いた。
■朝日フォトコン2020 審査員
＜特別審査員＞
写真家／福田健太郎、写真家／若子jet、写真家／小原玲
＜審査員＞
朝日新聞東京本社 映像報道部長／大野 明、東京写真記者協会事務局長／渡辺 幹夫、ネッツトヨタ高崎 代表取締役社長／横田 衛、同 専務取締役／神尾 岳志、朝日新聞社 前橋総局長／本田 直人、朝日新聞東京本社 販売局群馬担当／鈴木 孝英、全日本写真連盟 県本部委員長／塚越 邦明、日刊スポーツ新聞社販売局 販売２部 参事／川口 充、朝日学生新聞社 販売部 次長／若藤 和尚、群馬県朝日会 会長／中村 信、テレビ朝日 前橋支局長／久保 博満、関東朝日広告社 群馬支店長／渡邉 亨、プロフォトセンター マネジャー／齋藤 民治、朝日ぐんま 代表取締役／井口 文英、同 室長／池田 武、同 編集長／谷 桂、朝日フォトコン事務局長／中島 美江子
主催／群馬県朝日新聞グループ会・ネッツトヨタ高崎
共催／全日本写真連盟群馬県本部
後援／群馬県、群馬県教委、群馬県観光物産国際協会、前橋市、高崎市、エフエム群馬、 群馬テレビ
協賛／プロフォトセンター、群馬県写真材料商組合