廣瀬さんアーツ前橋で大規模個展
観て、触れて、嗅いで、体感して!
爽やかな香りを放つレモン=写真上、寝っ転がれるフカフカの絨毯=同右、人工植物に覆われた球体=同左…アーツ前橋で開催中の廣瀬智央さんの個展「地球はレモンのように青い」では、視覚や嗅覚、触覚を刺激する作品がズラリ。展示空間は清々しく、コロナ禍で縮こまった心身を解きほぐしてくれるような明、るさに包まれている。
ミラノを拠点に活動する廣瀬さんは、様々な感覚に訴える作品などを発表、国内外で高い評価を受けている。アーツ前橋では、開館時から屋上看板を用いた空のプロジェクトや母子生活支援施設でのプロジェクトなど、社会との接点を意識した作品制作に携わっている。
今展では初期から新作まで約90点を展示。「作品に込められた物語を感じてもらえるような空間を作りたかった」と作家自身が言うように、時系列ではなくテーマに沿った構成になっている「コロナ禍で、何気ない日常に凄く豊かなものが実っていることに気付いた人は少なくないでしょう。私自身、見過ごされがちなもの、日々の喜び、驚きなどを形にしてきましたが、訪れた方がその思いに触れ、共感してもらえたら嬉しい」と微笑む。
会場には多彩な表情を見せる空の写真や大量のペットボトルキャップを積み上げた立体、豆を閉じ込めた球体などが点在。全館撮影出来るため、作品をスマホに収める人も多いが、中でも人気なのが3万個以上のレモンが床を覆うインスタレーションだ。
空間に足を踏み入れると、その膨大な量と鮮やかな色、フレッシュな香りに圧倒される。五十嵐純学芸員は、「自由度の高い廣瀬さん作品は、一つの価値観に捉われていない。色んな受け止め方が出来る展示を五感で味わって」と話す。
今展は本物のレモンや草花も展示しているため、変化していく過程が楽しめるのも魅力。住友文彦館長は、「不安定な状況の中、ほか人が何を考えているのか、展覧会を通してそんなことを体感してもらえたら。何度も足を運んで欲しい」と語る。 (中島美江子)
7月26日まで。同館(027・230・1144)。