夢織人・新井淳一氏の軌跡
未だ見ぬ布を求めて-桐生出身の世界的テキスタイルプランナー・新井淳一さん(1932~2017年)の軌跡をたどる企画展「テキスタイル・プランナー 新井淳一の仕事 未だ見ぬ布をつくる」が、桐生の大川美術館で開催中だ。織都・桐生の技と比類なき創造力の融合によって生み出された独創的な布からは、夢織人のほとばしるような熱量が伝わってくる。 (中島美江子)
織都の技と創造力結集した布ズラリ 桐生で27日まで
金属のような輝きを放つ華麗な超軽量布、フリンジが織り込まれた量感たっぷりのフェルト、繊細かつ複雑な柄で覆われたジャガード織物‐伝統的な手仕事を起点に、「縮絨」「メルトオフ」「真空蒸着」など当時の最新技術を駆使して作り出された布の表情は、どれも驚くほど多彩で奥深い。
素材は綿から絹、ウール、金属、プラスチックフィルムまで幅広く、その製造工程は多岐に渡る。「未だ見ぬ布」を求め、創生の火種を燃やし続けた新井さんは故に「織物の魔術師」「ドリームウイーバー(夢織人)」などと称され、国際的に高い評価を受けている。
今展では、新井さんの友人である多摩美術大名誉教授のわたなべひろこさんからの寄付を基に収蔵した122点から85点を厳選して展示。会場には、80年代から最晩年までの代表作がズラリと並ぶ。コムデギャルソン創始者・川久保玲さんや三宅一生さんら世界的フ
ァッションデザイナーとの協業から生まれた唯一無二の布、歌手・加藤登紀子さんの衣装に用いられた光沢ある布、妻で版画家であるリコさんの水彩画を基に制作された立体的な織物、「万華鏡シリーズ」と呼ばれる煌びやかな布などの代表作に加え、新井さんが愛用していた服やアクセサリー、スケジュール帳も紹介されており、テキスタイルプランナーとしての仕事と共にその人となりが浮かび上がる。
布に負けず劣らず、その飾り方もユニークで独創的だ。天井を布で覆ったり布の一部を膨らませ、布そのものだけでなく壁に投影した影や色彩も見せるなど、飽きさせない工夫が満載だ。同館の正田淳学芸員は、「新井さんは常に、誰も見たこともない布を追い求めて制作に取り組んでいました。比類なき創造力と桐生の技が生み出した布たちを、じっくり観て欲しい」と話す。
今月27日まで。一般1000円、大高生600円、中小生300円。同館(0277・46・3300)。