文章を書くちょっとしたコツ、教えます!(上)

教えてくれる人

前澤 哲也 さん 『超基本・文章講座 (上)』

スマホの普及でメール、ブログ、ツイッターなど文章を書く機会が大幅に増えました。また、自分史や家族史をまとめたいと思う人も多いと思います。でも、文章を書いていると様々な壁に当たります。その壁を越えるためのちょっとした工夫を伝授したいと思います。

「文は人なり」

中学の教科書だったか、「文は人なり」というフランスの博物学者ビュフォンの言葉を初めて見た時はショックを受けました。

「文=人」では、まともな文を書けない自分は「ダメ人間なのか?」とひどくショックを受けた記憶があります。これは勝手な誤解で、真意は「文には書いた人の個性が表れる」ということでしょう。

例えば、「昨日、公園に行った」というごく単純な文章でも、「きのうね、こうえんにいったよ」と書けば子どもの文だとわかります。文末の「よ」を「の」にすれば女の子の文だし、「公園に行ったんだ…」と書けば心情さえ伝わってきますね。何の変哲もない短い文にも個性は反映されるのです。

 

感性が文章のもと

では、もう少し長い文章ではどうすれば個性を発揮できるのでしょうか。登山を例にしてみましょう。登山道で見た花の美しさを綴る人もいれば、苦労して登頂した喜びや達成感を書く人、はたまた山頂で知り合った人との語らいをまとめる人もいるでしょう。つまり、登山者の数だけ感想があり、その表現の仕方(文体)も「十人十色」となるはずです。まさに、「文は人なり」ですね。いい文章を書こうなんて気負わず、とにかく自分が「感じたことや思ったこと」、その感性を大切にすることが文章を書く第一歩なのです。

 

視点を変えてみる

「文章のもとは感性」と書きましたが、「視点」を変えると奥行きの深い文章になる例を挙げてみます。

「プレゼント」というタイトルの作文では、ほとんどの子供は「もらう」立場で書きますね。こんなプレゼントをもらってうれしかった、こういうプレゼントが欲しい、を中心にまとめます。そこで質問してみます。「なぜプレゼントをくれた人は君のほしいものがわかったのかな」すると「わたしの好きなものを知っていたから」「なぜ」「うーん、わたしことをよく見てるからかな」「じゃあ、君もプレゼントをあげるときは相手のことをよく知らないとね」「ほんとにそうだ。喜んでもらえたら私もうれしいし」「じゃあ、そのことをまとめてみようか」といって書かせたら、「プレゼントをあげることは相手を喜ばせること、そしてその笑顔でわたしもうれしくなること」と書きました。

 

具体的なものに置き換える

作文が大の苦手という子どもと話をしていた時のこと。何をどう書いたら良いのか分からないという彼に習い事のスイミングのことを聞いてみると、ほぼ毎日5キロくらい泳いでいて10年続けているとのこと。早速、電卓で5キロ×20日×12カ月×10年を計算すると1万2千キロ、それってほぼ地球の直径じゃないかというと、「ええええ!」と目を丸くしていました。地球儀を持ってきて、「円周は直径×円周率だから君は地球を3分の1周泳いだことになるよ」というと「よおし、地球一周泳ぐまで練習してオリンピックに出る」と意気込み、彼は大きな夢を作文にまとめることができました。

まえざわ・てつや/1959年太田市生まれ 中央大学卒業後、松竹シナリオ研究所で映画シナリオを学ぶ。以後、「朝日ぐんま」記者や塾講師をしながら、近代軍事史を研究。『日露戦争と群馬県民』(煥乎堂)で第42回群馬県文学賞(評論部門)、『帝国陸軍高崎連隊の近代史』(雄山閣)で第15回日本自費出版文化賞(研究・評論部門)を受賞。現在、学習塾講師・家庭教師として主に小論文や国語、社会の指導に当たる

掲載内容のコピーはできません。