春先になると毎年、登録が済んでいる犬の飼い主宛に届く一通の葉書。狂犬病予防注射を知らせるものだ。毎年、受けてはいるものの狂犬病という病気やその恐ろしさをどれだけ知っているだろう。公益社団法人群馬県獣医師会事務局長の大沢一之さんに、狂犬病予防注射の重要性について聞いた。 (飯塚ゆり子)
―狂犬病はどんな病気ですか?
狂犬病ウィルスに感染した動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からウィルスが侵入することで引き起こされる病気です。病名に「犬」という文字が入っていますが、犬以外のすべての哺乳類に感染の危険性があります。もちろん、人間も例外ではありません。発症したら効果的な治療はなく、致死率100%という恐ろしい病気です。
―日本では感染が聞かれませんが、予防注射は必要ですか?
必要です。狂犬病予防法では飼い犬の登録と予防注射、そして鑑札と注射済票を付けることが飼い主に義務づけられています。日本で60年以上、狂犬病の発生がないのは、予防注射を行ってきた成果です。世界では今でも毎年5万5千人もの人間が狂犬病で命を落としています。現代は交通機関が発達していますから、諸外国から狂犬病ウィルスが日本に侵入することは十分に考えられます。仮に、日本で野生動物に狂犬病ウィルスが蔓延してしまえば手の打ちようがありません。
―すべての哺乳類に感染する危険性があるのに、犬への注射だけが義務付けられているのはなぜですか?
人に感染する場合、感染源の多くが犬であるからです。つまり、狂犬病は犬への予防注射で感染の多くを防ぐことができるといえます。飼い主さんの中で「うちの犬は室内飼いだから感染のリスクが少ない」と判断している人がいるとすればそれは大きな間違い。大切な小さな家族と、私たちの健康を守るために、必ず飼い犬には予防注射を受けさせましょう。
―注射の受け方を教えてください
自治体による集合注射と、動物病院での個別注射があります。集合注射の実施日は、各自治体の広報などに記されていますので、確認してください(※)。なお、自治体へ登録済みの犬の集合注射料金は3500円です。未登録の場合は登録料が別途3000円かかります。
集合注射の日が過ぎてしまっても、動物病院で個別に受けられます。
※現在、コロナの影響で春の集合注射を延期している自治体あり。