ぐんまの酒粕スイーツ

日本酒を作る工程でできる酒粕。県内にある多くの酒蔵では、新酒を搾る冬から春にかけて、できたての酒粕を自社で販売したり、スーパーや酒店などに卸したりする。今週は今、発酵食品としても価値が高い酒粕を使った様々なスイーツを紹介する。なお、アルコール成分が残っている商品もあるため、購入の際は確認を。

酒粕とは
日本酒製造の副産物は、栄養満点の発酵食品
酒粕は、日本酒製造工程で取れる副産物だ。まずは蒸した米に、こうじや酵母、水を加え日本酒の元となる「酒母」を作る。この酒母の仕込みによりアルコール発酵が進むと「もろみ」ができ、これを搾る工程で分離させた固体の部分が「酒粕」となる。したがって、新酒の季節が酒粕の旬でもある。副産物ではあるが、米やこうじ、酵母に含まれる炭水化物やたんぱく質、アミノ酸、ビタミンなどの栄養素に加え、腸内環境を整えるのに必要な食物繊維を豊富に含んでおり、古くから様々な食品に利用されている。また、発酵食品として免疫力アップが期待され、近年の健康ブームや食品ロス削減の動きの高まりによって酒粕の研究も進み価値が見直されている。冷凍保存も可能で便利な食材だ。
(参考:日本食品標準成分表2020年版、日本酒造組合中央会HPなど)

前橋市
町田酒造店の酒粕
同店の看板商品「清嘹(せいりょう)」は、敷地内の井戸からくみ上げた利根川の伏流水を使い、きめ細やかですっきりした日本酒。そこから取れる酒粕も香りが良くさっぱりとしている。同店では酒粕を1㎏税込650円(純米大吟醸酒粕は同550円/500g)で直売
■前橋市駒形町65/℡ 027-266-0052/営業時間:午前8~午後5時/定休日:土日祝日

美香蔵
繭美蚕×パティスリー・ヒデ(前橋)×町田酒造店
前橋市内にある共愛学園前橋国際大学生らによる仮想企業「繭美蚕(まゆみさん)」、町田酒造店、ル・パティスリー・ヒデの三者による酒粕マドレーヌ「美香蔵(みかくら)」は、2015年に誕生した。同大の兼本雅章教授のゼミ生が前橋の魅力発信を目指す取り組み「オール前橋魅力発見プロジェクト」の一環で生み出した産学連携商品。日本酒の風味を生かすため甘さは控えめ。しっとりとしていて食べやすく、小さい子どもや酒に弱い人でも食べられるよう加工されている。パッケージは若い女性を意識したデザイン。17年度からは同市のふるさと納税返礼品となっている。繭美蚕社長を務める同大国際社会学科3年の星野菜緒さんは「学生が新しい前橋のおみやげとして開発した商品。前橋と言えば美香蔵と言われるよう、これからもPRしていきたい」と意気込む。個包装。問い合わせは繭美蚕(メール mayumi3@c.kyoai.ac.jp)へ。

■ル・パティスリー・ヒデ前橋本店/前橋市川原町2-3-6/℡027-289-4101/営業時間:午前10時~午後6時半/定休日:毎週水曜、第3水木は連休 ●美香蔵(1個税込180円。5個入り同1400円) ※伊勢崎店、高崎店でも販売中
【繭美蚕が出店予定のイベント】4日「れんが蔵マルシェ」(場所:前橋市芸術れんが蔵)、13日「めぐりあいマーケット@ぐりーんふらわー牧場」、27日「めぐりあいマーケット@玉村北部公園」

酒粕チーズタルト
SWEETS SHOP YOSHIDA
前橋の洋菓子店「SWEETS SHOP YOSHIDA(スイーツショップヨシダ)」は、「地場産の素材を使った新商品を」と5年前から地元前橋の酒蔵・町田酒造店の日本酒「清嘹」を作る際に取れる酒粕を使ったチーズタルトの製造を始めた。クリームチーズに酒粕を加えた焼き菓子で、酒粕の風味が強く感じられるよう配合を工夫したという。冷凍の状態で販売しており、常温で20~30分、または冷蔵庫で2~3時間置くと食べごろに。さらにトースターで温めでも酒粕の香りが立ち、また違った味わいが楽しめるという。オーナーシェフの吉田隆さんは「チーズと酒粕は発酵食品同士なのでとても相性が良い組み合わせ。健康や美容に良い成分が豊富な食材をスイーツで楽しんで」と話す。

■SWEETS SHOP YOSHIDA/前橋市朝倉町2-4-7/℡ 027-226-6019/営業時間:午前10時〜午後7時/定休日:火、水曜
●酒粕チーズタルト(税込240円) 

みどり市
近藤酒造の酒粕
みどり市大間々町の老舗酒蔵。赤城山の伏流水を仕込み水に辛口一筋にこだわって酒造り。淡麗、辛口の「赤城山(あかぎさん)」から取れる酒粕は香り高く、甘酒の材料としても人気。3月頃まで県内のスーパーなどに卸している。
■みどり市大間々町大間々1002/℡ 0277-72-2221/営業時間:午前9時~午後5時/定休日:土日祝日

酒粕入り焼き菓子各種
スイーツ バッカス(桐生)
酒粕入りのパウンドケーキやスコーン、チーズケーキなどを製造する「Sweets Bacchus(スイーツバッカス)」は、10年前から桐生で、焼き菓子専門店として営業している。オーナーパティシエの齋藤直子さんは都内で洋菓子店を経営していたが、生ケーキは消費期限が短くフードロスが多いことに心が痛み、賞味期限の長い上、日がたつにつれて美味しくなるパウンドケーキ作りに転換しようと決意。自分にしかできない何か個性的なものを作りたいと考えた結果、地元の酒造でつくられる酒粕入りのスイーツ専門店として再出発した。店名の「バッカス」はギリシャ神話の酒を司る神の名に由来する。酒粕入りパウンドケーキは常時4~5種類。全て、近藤酒造の「赤城山」吟醸酒から取れる香り高い酒粕を使用。12カ月を通して月ごとに季節のケーキをリリースし、3~4カ月単位で入れ替えていく。現在は、「ビターオレンジ」、「生チョコドライジン」「ベリークリームチーズ」「さくら」「ピスタチオ」「7種のフルーツ」を販売中。齋藤さんは「酵母の働きのおかげでしっとりした食感に仕上がる。断面の美しさを意識して作っているので、酒粕の芳醇な香りとともに、切ったときの驚きも楽しみながら味わってほしい」と話す。

Sweets Bacchus/桐生市新宿3-13-26/℡ :070-5010-7755/営業時間:午前10時~午後6時/定休日:毎週月曜
●酒粕入りパウンドケーキ各種(税込1200円~)●マクロビこうじスコーン6個入り(同650円)●酒粕入りお味噌のケーキ「上州焼きまんじゅう」(同170円)

酒かすジェラート
わびさびや(桐生)
和の素材や季節のフルーツなどを使用したオリジナルジェラートを製造販売する「わびさびや」では、「赤城山」の大吟醸酒粕入り「酒かすジェラート」を販売している。毎年、2月末から3月初めごろ新粕が入荷。地元桐生の新鮮な牛乳をベースにした真っ白でクリーミーなアイスは、濾(こ)していない酒粕を生のまま使用しているため、ふたを開けた時から甘酒のような香りが感じられる。オーナーシェフの高野欽市さんは「開業以来16年作り続けていてファンも多いジェラートの一つ。甘さ控えめで最後まで飽きずに美味しく召し上がれますよ。ついこの前、今年の新粕が届きました」と話す。原料の酒粕はアルコール分を飛ばしていないため、持ち帰って自宅で食べられるようカップでのみ販売しているという。

■わびさびや/桐生市新宿3-4-49/TEL: 0120-170-144/営業時間:午前11時~午後5時/定休日:毎週月・火曜、最終週のみ、日・月
●酒かすジェラート(税込350円)

藤岡市
松屋酒造の酒粕
時代の流れに合わせた酒造りで地元に愛される酒を目指し酒造りを行う。2008年に現在の6代目が手掛けた銘柄「流輝(るか)」は果実感と甘みが特徴で、香り高く優しい口当たりながらもしっかりとした旨味をもつ。良質な米を原料とした流輝の酒粕は酵母の香りが良く、米の旨みが残っている。同酒造で税込1㎏570円で販売。
藤岡市藤岡180/℡ : 0274-22-0022/営業時間:午前10~午後5時/定休日:日曜・祝日

和酒パウンド流輝
成田屋(藤岡)
藤岡の和洋菓子店「成田屋」は、松屋酒造とのコラボスイーツ「和酒パウンド流輝」を昨年2月に発売した。成田屋3代目の成田庸一さんが、松屋の6代目・松原広幸社長と意気投合し、開発。「流輝」は、平成20年に松原社長が手掛けた比較的新しい銘柄の日本で、パウンドケーキに使用するのは、「流輝 純米吟醸 山田錦 火入」の清酒と、製造工程でできる酒粕。フルーティーで高貴な風味を損なわないよう、生地に入れる酒粕以外の材料はバター、小麦粉、砂糖、卵、水あめのみと、できるだけシンプルにし、焼き上げ冷ましてからさらに「流輝」をふりかける。そのためしっとりとしたケーキに仕上がっている。成田さんは「松屋の社長に『しっかり流輝の味がするね』とお墨付きをもらっている。お酒好きに人気です」と話す。

■成田屋/藤岡市藤岡66 ℡0274-22-0368 定休日:日曜 ●和酒パウンド流輝1本(税込2000円)、同1カット(同200円)
※このほか、居酒屋「奥多野」(℡0274-24-1185、藤岡市藤岡186)でも販売

川場村
土田酒造の酒粕
土田酒造の日本酒は、すべて醸造用アルコールなどの添加物を使用しない「生もと造り」。江戸時代からの続く製法では、米、水、こうじを材料に蔵に住んでいる菌を活かして醸造する。酒粕は、複雑で味わい豊かな酒が作られる工程で生まれたもの。

川場村川場湯原2691/℡:0278-52-3670/営業時間:午前10~午後4時(最終入館午後3時半)/定休日:現在木曜日
温かいコーヒーに黒粕とミルク、砂糖を入れるとカルーアミルクのようになる酒粕カフェオレはお手軽でおすすめ。鍋やラーメンなどに入れても料理のコクが増す。

黒粕ソフトクリーム
土田酒造
「黒粕ソフトクリーム黒土田」は、土田酒造が作るしっとりした黒粕を使ったソフトクリーム。蔵元が自ら手掛けるソフトは、豊かで複雑な味わいの黒粕とミルクの甘みとがマッチしている。口の中に奥深い印象が残るソフトに。昨年から黒粕の味わいが濃厚に感じられ、食べやすくリニューアルした。風味が一段と良く香り高くなったと評判だ。黒粕に使用する酒の銘柄は、「シン・ツチダ」が多いが、その時に応じて変わる。他にも日本酒を使ったくちどけの良い「ソフトクリーム白土田」も。両方とも、購入できるのは、同酒蔵の売店のみ。蔵見学した後に、冷たいソフトを食べてみては。

●うまみの黒粕ソフト「黒土田」(税込350円)は同酒造売店で販売。オンライン限定で、酒粕(黒・白)も販売。

黒粕の旨みを生かしたしっとりとして濃厚な黒粕チーズケーキと酒粕

黒粕チーズケーキ
酒粕&純米日本酒パウンドケーキ
薬膳イタリアンLA ITAMESHI(ラ・イタメシ)オンラインショップ「egg」
土田酒造の酒粕を使った焼き菓子が、薬膳イタリアンLA ITAMESHI(ラ・イタメシ)(前橋市本町)のオンラインショップ「egg」で購入できる。

「黒粕チーズケーキ」は、土田酒造の新鮮な黒粕と上質なクリームチーズを合わせた驚くほどしっとりした濃厚で滑らかなケーキ。薬膳レストランで腕をふるう松井克行シェフが手掛けた逸品で、黒粕のほのかな香りが漂う。松井さんは、「レストランのオープン時から、煮込み料理などに、酒粕を使っています。土田酒造の酒粕はとてもおいしいので気に入っています。チーズと合わせるとさらにコクがでて評判の良いケーキができました」と胸を張る。

また、同様に純米の酒粕が入っている「純米酒粕&純米日本酒パウンドケーキ」は、中がしっとりとしていて、甘さ控えめ。ブランデーのように純米酒を振りかけて焼いている。口に入れると上品なフレーバーが広がる。卵は榛東にあるアクザワファームから取り寄せ、てんさい糖を加えるなど材料にこだわった贅沢な味わいに仕上げた。

薬膳イタリアンLA ITAMESHI(ラ・イタメシ)のオンラインショップ「egg」(QRコード参照) ●黒粕チーズケーキ JAファーマーズ朝日町店でも販売 ●パウンドケーキ(2200円税込)

川場村
永井酒造の酒粕
自然に育まれた日本酒ブランド「水芭蕉」「谷川岳」などで名高い永井酒造。「水芭蕉」大吟醸の酒粕は、白くて香りも高く、やや甘味も強い。
■川場村門前713/℡0278-52-2311

大吟醸酒粕りんご ・ 大吟醸酒粕ガナッシュ
パティスリー ル・カドゥー(伊勢崎)
伊勢崎の洋菓子店「パティスリー ル・カドゥー」では、永井酒造の「水芭蕉」の大吟醸酒粕をクリームの部分に使用したマカロン2種「大吟醸酒粕りんご」「大吟醸酒粕ガナッシュ」を5年ほど前から販売している。同店オーナーパティシエールの周東恵子さんは、同社の酒粕を初めて食べた時、果物と合わせたり、チョコレートにアレンジできるかもしれないと直感。美味しい水から作られる酒のイメージから、白いマカロンにブルーの線と金箔スプレーで、川の水面がキラキラ光る様子を表しました。フルーティーで華やかな、大吟醸の味わいを楽しんでほしい」と話す。「大吟醸酒粕りんご」では、角切りの皮つき煮リンゴに、酒粕や砂糖を加えて火を通した、ほんのりピンク色のペーストを挟む。シャキシャキとした食感とともに、「リンゴ風味の甘酒」のような味わいが楽しめる。「大吟醸酒粕ガナッシュ」は、カカオ分が多めの濃厚なチョコレートに生の酒粕を混ぜてからホイップしたものをサンド。口当たりが軽いのに味は濃厚。あとから日本酒の風味がふわっと感じられる大人向けの商品で、男性ファンも多いという。

ル・カドゥー/伊勢崎市宮子町3409-6/℡:0270-26-4555/営業時間:午前11時~午後7時半/定休日:毎週火曜・第2・4水曜
●マカロン/大吟醸酒粕ガナッシュ(税込275円) ●マカロン/大吟醸酒粕りんご(税込275円)

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