Bリーグで活躍のため、ポジション変更という新たなチャレンジ
大学3年だった昨シーズンは、サンロッカーズ渋谷で特別指定選手として10試合に出場。平均出場時間11分、17得点と結果を残して能力の高さを見せた八村阿蓮だったが、今シーズンは昨年12月にサンダーズに加入するも、出場時間が短く、なかなか結果を残せていない。それは、今シーズンからポジションを4番から3番に変更したからだ。リーグを代表する選手になるため、そして日本代表で活躍するためにポジション変更は避けては通れない成長への道だった。 (星野志保)
真逆のプレーの難しさを痛感
ポジション変更という新たなチャレンジが始まって3カ月が過ぎた。大学まで4、5番ポジションでプレーしていた八村は、サンダーズでは3番ポジションに挑戦している。
ここでポジションについて説明しよう。1番はポイントガード、2番はシューティングガード、3番はスモールフォワード、4番はパワーフォワード、5番はセンターと呼ばれ、1~3番はゴールから離れたアウトサイドがプレーエリアだ。4、5番はゴールに近いインサイドでプレーする。1~3番はゴールに正対してプレーするのに対し、4、5番はゴールに背にしてプレーすることが多い。その中で3番は、インサイドとアウトサイド周辺でプレーできる器用さと身体能力の高さ、高い得点能力が求められる。
ではなぜ、八村は3番でプレーする必要があるのだろうか。それは、Bリーグの4、5番ポジションには200センチを超える強靭な肉体を持つ外国籍選手が多いため、198センチの八村では、今までのポジションでプレーするのが難しいからである。身体能力が高く走力がありシュートも上手い八村が力を発揮できるのは3番というわけだ。さらに、日本代表で3番でのプレーが求められていることがあり、新たなポジションにチャレンジしなければならない理由でもある。
八村は3番の難しさをこう語る。「4、5番と3番では、バスケのやり方がガラッと変わります。ゴールに背を向けてプレーするのと、正対してプレーするのとでは全然違いますし、4、5番はスクリーン(壁のように相手ディフェンスの前に立って、仲間の攻撃を助ける動き)をかけるほうで、3番はスクリーンをかけてもらうほうになります。一番難しいのはポジショニングの部分です」
3番での初出場で苦い経験
サンダーズでのデビュー戦は、太田市運動公園市民体育館で行われた今年1月8日の島根スサノウマジック戦。46―84で点差が開いた中で迎えた4Qのスタートから、3番ポジションで10分間出場した。そのときのことを八村はこう語る。
「3番ポジションの練習を始めて1~2週間ぐらいだったので、何をしたらいいのかまったくわからない状態でした。緊張もしていましたし、何もできませんでした」
その中で、「練習しないと何もできないのがわかったので、練習あるのみだと思いました」と、自分の力を思い知った。
初得点は3月19日の千葉ジェッツ戦。4Q残り8秒でバックボードに当てたボールはリングをとらえられなかったが、跳ね返ったボールをすかさず右手で押し込みシュートを決めた。
「この得点は、リバウンドチップで入れたので、シュートを決めた感覚はなかったんです」
翌日には満足のいくシュートが決まった。「僕の中ではあれが初得点かなと思っています」と言うように、4Q残り2分41秒に3ポイントラインのわずかに内側から放ったジャンプシュートは、滑らかにリングに吸い込まれていった。
4月3日終了時点で8試合に出場し、平均出場時間は約4分、9得点と、少しずつ試合に出ながら3番の経験を積んでいる八村。
サンダーズを率いるトーマス・ウィスマンHC(ヘッドコーチ)は、「試合の中で少しずつ経験を積めているので、練習の中でも技術や戦術を磨いていってほしい」と期待する。
「シャイなところがある」というが、今ではすっかりチームに馴染んでいる。「加入前から(菅原)暉とずっと連絡を取り合っていたので、最初からいい感じでチームに入れました。チームメートは良い人たちだし、スタッフもよくしてくれます。居心地が良いんです」と早い時期にチームに溶け込んだ理由を明かした。
今シーズンも残り13試合になった。「プレータイムをもらえたときに、どれだけ力を発揮できるか。それを求められていると思います」。抱負を語る八村の慣れないポジションでの奮闘は続く。