太田のゴルフ場で 群馬県産バナナ誕生!

今春から通年販売スタート

群馬県産バナナがついに誕生!―太田市の太田資源開発(同市北金井町)が運営する「鳳凰(ほうおう)ゴルフ倶楽部(以下、同GC)」の敷地内でバナナ栽培が行われ、今年4月25日から販売がスタートした。バナナが商業用に生産されるのは県内初という。香り高く、甘くてねっとりとした濃厚な味で、早くもファンが急増。そもそも群馬でバナナが育つのか? なぜ、太田で? その謎を解くため、同社の農園を取材した。
高台に建つハウス。左手奥がゴルフ場

濃厚さが人気
ゴルフ場にちなみ「ほうおうバナナ」と命名された。品種は近年、「皮ごと食べられる」と話題の岡山産高級バナナ「もんげーバナナ」と同じ台湾系「グロス・ミシェル」。果実の長さは20㌢ほどで、糖度は平均20とかなり高く、芳醇な香りも特徴だ。

ゴルフコースに隣接する直営のバナナ農場「鳳凰ファーム」では、1本税込350円で直売。このほか、ゴルフ場クラブハウスのレストランや県内の一部のスーパーなどでも販売している。ファームで購入した市内の藤本義信さん、公子さん夫妻は「とろりと溶けていくような口当たりで、とても上品な味。仲間にも分けたら大好評。近々また買いに行くつもり」と話した。同GCの大澤順支配人は、「レストランで提供するバナナジュースも好評。ゴルフ場でのお土産用にパウンドケーキなどの加工品の開発も考えています」と今後の展開を見据える。

ハウスで収穫したてのバナナ(推定約150本、25㌔)を抱える中神さん

頼もしい、エキスパート
同GCは、2018年に民事再生申請し、現在は砕石や産業廃棄物処理などを手掛ける祥和コーポレーション(栃木県佐野市)のグループ会社・太田資源開発が運営している。その経営再建の一環として、新たに「農産事業部」が立ち上げられた。

バナナ栽培を担当するのは同部の中神洋二部長(58)。千葉大園芸学部出身で熱帯植物を専門とし、国産のもんげーバナナの栽培にも携わった経験を持つ。このほか、中国、ベトナム、千葉、福島など、国内外で10年以上バナナ栽培を手掛けてきたエキスパートだ。

ファームは八王子山公園(太田市北部運動公園)東の高台にある。4年前に閉園した旧太田吉沢ゆりの里の跡地に3連棟の大型ビニールハウスを建て、一昨年12月からバナナ栽培をゼロからスタートさせた。

中神さんのこだわりは「土づくり」。化学農薬は一切使わず、ダンゴムシの力を利用して土を分解させるなど「自然体」を大事にする。また、母体が産廃処理会社であることから、安全な素材にこだわり有害物質を含まない木材チップを使用するほか、水はけを良くするためコンクリートや瓦などの砕石なども活用。中神さんは、「SDGsにもつながり一石二鳥」と話す。

ハウスの中はバナナの生育に最適な20~30度に保たれ、そこに高さ3㍍を超えるバナナの株が120本植えられていて、熱帯ジャングルさながら。

中神さんは「リピーターも徐々に増えてきました。興味のある人は見学だけでもOK。将来的には、地元の園児や小学生などの見学なども受け入れて、地域交流を図っていけたらと思っています」と話す。

ゴルフ場レストランで提供しているバナナジュース(税込600円)

通年でおいしさ広めたい 
バナナは低カロリーの上、マグネシウム、カリウム、トリプトファン(アミノ酸)、ビタミンBなどの栄養素も豊富に含み、皮も簡単にむけるため手軽な栄養補給やおやつとして人気の果物だ。総務省の家計調査では、2020年の生鮮果実の消費量が1位となったが、その99%は輸入に頼っているのが現状だという。

だが、冬の温度管理さえ徹底すれば、寒冷地でも生産は可能。現在、東北から九州まで国産バナナの生産者が増えつつある。中神さんは「生育には日光が重要。その点、日照時間が長い群馬は栽培に有利」という。中神さんは「株ごとに収穫のサイクルがずれているので、年間を通して収穫可能。今後はスーパーのほかデパートなどでも販売できるようにし、多くの人に、太田産のバナナのおいしさを知ってもらいたいですね」と意気込む。           (上原道子)

気になるぐんま百聞一験 観察編
「甘くてねっとり」「皮が薄い」ってホント?

今回、バナナの皮の色の変化を観察して当コーナーで報告したい旨を相談したところ、中神さんが収穫したての緑のバナナを提供してくれた。

初日のバナナは濃い黄緑色=写真①。まだ固く、張りがあり、つやもある。においは無し。変化がほとんどないまま5日経過。8日目にようやく緑が薄くなり、根元が黄色みがかってくる。その10日後、全体的に黄色みを帯びてきた=写真②。油断をしていたら13日目、いつの間にかほぼ黄色に=写真③。中神さんが、「シュガースポットという黒いポツポツがでてきたら食べ頃」と言っていたので、「もうちょっとだな」と思っていたら15日目、もう、完全に熟しているではないか=写真④。マスク越しでも芳醇な香りが。皮は当初に比べ張りがなくなりしっとり。翌日、早速皮をむくと、バナナの香りで辺りが満たされる。ひと口パクリ。甘ーい!まさに「ねっとり」。そして口の中にいつまでもまとわりつく香り。群馬でこんなに美味しいバナナができるとは!

最後に「皮が薄い」という特徴を検証=写真⑤。黄色い部分と、実と接していた白い部分とを分離させてみると、サツマイモのような薄皮がはがれる。試しに皮ごとパクリ。シャキシャキという歯ごたえを感じるだけで、特に味はしなかった。

今回、青いバナナを目にするのは初めて。しかも、これまでバナナの皮を食べることなど考えたこともなかった。県産バナナが誕生したからこそ、できた体験だと感慨深く思った。小中学生が自由研究のテーマにしても面白いかもしれない。

■鳳凰ファーム太田市吉沢町2170/中神さん080-9528-4601 /午後1時半~同3時半/火曜定休

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