玉城ちはるさん
高崎市在住の、いつも元気なシンガーソングライター・玉城ちはるさん(42)。本業のほか、ラジオに講演活動にと大活躍。6歳の長男と1歳の長女、2児の母としても奮闘中だ。その素顔に迫った。
―FM GUNMAの番組に出演しています。
今年度は毎週金曜日正午からのFM GUNMAの番組「FRIDAYフルスロットル!!!」のメインパーソナリティーを務めています。「ご容赦ください」を合言葉に、3時間の生番組に出演しています。
共演する大津瑛寛アナウンサー(26)とのトークは「私らしく」「自然体で」を大事にして話していますが、あまり砕け過ぎると大津さんから突っ込みが入るんです。子育て中の方からのメッセージも多数寄せられたり、「タマキとティータイム」のコーナーではリスナーさんと生電話で交流しています。身近で親しみやすい存在でありたいと思っています。
―なぜ、群馬に移住を?
主人が仕事の都合で北海道へ転勤になり、移住の選択を迫られました。東京か、私の実家広島か、主人に付いて北海道か、主人の実家高崎かと。
当時の世田谷区は待機児童が多く、長男は保育園を2回落ちました。ベビーシッターや病児保育には費用もかかり、結局、仕事も子育ても両立できそうな高崎に子どもと移住し、主人は単身なんです。
―最近、コロナで大変だったと聞きました
実は少し前、息子がコロナにかかり、私も感染してしまって。ワンオペでは、家庭内感染を防ぐのは困難です。息子が39度で私が40度。自分も療養したいけど、看病もしなければいけない。辛かったです。幸いに娘はかかりませんでしたが、授乳の時は、レインコートを着てマスクしてフェイスシールドして…。息子に「妹には絶対触っちゃあダメ!」と叫んでいました。主人も両親もとても心配していました。
保健所からは食べ物や日用品が届いてありがたかったのですが、離乳食はなかったんです。それで知り合いが玄関に置いてくれた時は心の中で「バンザイ」と喜びました。
―群馬での子育てはいかがですか?
群馬での保育園探しでは、「また落ちるかも」とびくびくして、移住前から見学予約を7つぐらい入れました。そしたら、なんと1カ所目で「来月からどうぞ」と言われて。「うそでしょ?」と言いたくなるほど嬉しかったです。家事や育児の支援を行う「高崎市子育てSOSサービス」というシステムなど公的支援や無料で遊べる緑豊かな公園もたくさんあります。子育てしやすい環境が整っていました。ただ、それでも毎日たった1人で、仕事と2人の子育てをするワンオペは、やっぱり大変です。
―結婚前にホストマザーをしていたのですか?
24歳のとき、中国人留学生と出会い、それをきっかけに10年間、36人の多国籍の若者と共同生活をする「ホストマザー」になりました。住居費や食費の援助して、養護施設で育った日本人やアジアの留学生の身元を引き受けました。私自身、父が亡くなり、助けられなかった気持ちや大学を中途退学して悔しかったこと、誰にも悩みを打ち明けられなかった経験がありました。彼らが学校に通うのを断念せず、最後まで卒業してほしい、と思ったのです。
―身元を引き受けた若者と実の子どもとは、接し方に違いがありますか?
どちらも愛情的には変わりがないと思っています。ホストマザーなのに、彼らとケンカもしましたが、みんな立派な大人になっても「ママ」と呼んで会いに来てくれます。
その一方で、彼らのことは「一人の人間」として尊重できるのに、産んだ子はどこかで「自分のモノ」と思ってしまうことがある。体面が気になるのだと思います。他人の子と比べて、「まだ歩かない」と心配したり、「しつけができていないと言われないか」と不安になったり。すごくエゴだなって。出産前は、子育ての困難さについて保護者から相談を受けたとき、偉そうにアドバイスをしていましたが、我が子の子育てとなるとうまくいかず、自分自身から切り離して考えられない場面が多いと気づきました。育児の難しさを痛感しています。
―近年、講演活動やLINE相談をしていますね。
主には小中学校に伺って「命の参観日」という講演をしています。ある校長に「自分と異なる人を排除しないで、どのようにひとつ屋根の下で、あるいはどのように教室で過ごすかを、小学校1年生にも分かるように話してください」と言われたことがきっかけです。「多文化共生」の視点は、子どもの時こそ学ぶ必要があると、すでに、群馬を含め、全国約140カ所を回りました。
講演は、対話をしながら進行します。「親子げんかする人いる?」と聞くと「はい!はい!」と手が上がる。後ろで参観している保護者がクスクス笑って。「じゃあ、親友なのに思いが伝わらないことある?」とそっと聞くと、周りを気にして手が上がる。「そうだよね。あなたの気持ちは誰にも分からないけど、あなたを知りたいと思ってる人がいるよ。お父さん、お母さん、先生、お友だち…。でも、あなたのことは、言葉にしなきゃ分からないんだよ」と。後半には必ず「ありがとう、ごめんなさい、大好き」とお互い目を見つめ合って言う「優しさ貯金ゲーム」もします。多感な思春期の子どもたちですが、恥ずかしがってできない生徒は、1人もいません。
他にも、「LINE相談」をしています。子どもから直接、相談が来ますが、最近はママさんパパさんからの相談も急増しています。もちろん、行政にはきちんと窓口がありますが、私のような外の風も必要なようです。
―夢はなんですか?
ラジオでは、「紅白出たい」と笑っていますが、本当は「リアル・ティータイム」を定期的にできたらいいと思っています。お悩み抱えている人、困っている人がいたら「じゃあ、一緒にお茶しましょう」と声を掛けて気軽に話したいです。こんな私ですが、群馬のみなさん、これからもよろしくお願いします。 (文・写真/谷 桂)
■たまきちはる/1980年、広島県生まれ。大学進学時に父が自殺で他界し、進学を断念。19歳で上京し、音楽や芸能活動を始める。24歳から留学生、養護施設出身者支援活動として10年間共同生活。全国の小中学校、高校、大学で講演会「命の参観日」を多数開催。FM GUNMA「FRIDAY フルスロットル!!!」(毎週金曜日正午)メインパーソナリティーほか、テレビ、CM多数。21年には、テイチクレコードより「ありがとう ごめんなさい 大好き ~君が射す光~」リリース。安田女子大学非常勤講師。著書「餃子女子」がベストセラー。
●「命の参観日」依頼は、下記のコンタクトフォームから
https://tamakichiharu.com/